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(左から)ヘラルボニーの松田崇弥・文登

松田崇弥・文登の双子が手掛ける福祉実験ユニット「ヘラルボニー」。アートのライセンス提供やプロデュース、自社ブランド製品の企画などを展開するスタートアップとして、現在約30の福祉施設と契約を結び、障害のあるアーティストが描いた2000点以上のアートデータを保有している。

松田兄弟は、2019年、Forbes JAPANが"30歳未満の30人"を選出するアワード「30 UNDER 30」を受賞。今年は、アドバイザーとして推薦・選出に関わった。

今年の30 UNDER 30は「インクルーシブ・キャピタリズム」をテーマに据えている。インクルーシブ・キャピタリズムとは、年齢、性別、有名無名、過去の実績や規模の大小など、立場にとらわれずに資本へアクセスできるようにすることで、より強い成長を目指すというものだ。

“障害”と近い距離にいる松田兄弟はいまの社会をどう捉えているのか。10月から、「BAG-Brillia Art Gallery-(バッグ-ブリリア アート ギャラリー)」(東京建物)で開催中の「ヘラルボニー/ゼロから始まる」の会場で話を聞いた。


障害のある人たちの「限界」を決めない


文登:僕たちには、4歳年上で、重度の知的障害を伴う兄の翔太がいます。そんな兄の存在が、起業への原動力になりました。ヘラルボニーの目的は、障害のある方が1人のアーティストとして活躍できる社会をつくること。「障害者アート」という文脈は “支援”や“福祉”という枠を抜けられないのが現状です。だからこそ僕らはビジネスとして成り立たせたいという想いで、“株式会社”を選択しました。

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ヘラルボニー・松田文登

崇弥:障害のある方を支援する施設である「就労継続支援A型・B型」などは、障害の度合いや受け入れ人数、支援者数などの条件を満たせば助成金が入る仕組みです。国や厚生労働省があってこそ成り立つこのような福祉業界のモデルは、安定的ではあるのですが、障害者側からすれば「あなたたちはこのぐらい」と限界が決められ、レールに載せられているとも言えます。

だからこそ僕たちは、従来の助成金や国の仕組みにあえて頼らず、知的障害のある人たちの才能を起点に経済の循環をつくっていくことを目指しています。

例えば、素晴らしいアート作品を描く方がいても、本人や福祉施設、親御さんがその才能に気が付き、「社会に出す」というアクションを起こすまでのハードルは高いんです。僕たちは、そこにある障壁を全部とっぱらいたいと考えています。

つまり、障害がある方たちが、その才能を最大限に活かして社会参画を果たせるような構造づくりです。「できないことをできるように促すことで、マイナスをゼロにする」という就労の形ではなく、「既にプラスなもの(才能があるもの)を最大化することができるように、得意なところ以外は全部僕たちがやります」という仕組みをつくりあげてきました。

文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=杉能信介

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