企業の中のイノベーター 僕がSansanの「社内コーチ」になるまで

Sansan人事部 Employee Successグループ 三橋 新さん(左)


その後、社内の部活支援制度を利用してコーチング部を作り、結果としてその動きが、会社にコーチングが認められていく起点となりました。部活動の予算(コーチングをカフェで実施する費用)をもらい、半年に一度、部活継続を目的に実施したアンケートの結果を報告。満足度の高さが正式承認につながりました。2013年頃のことです。

当時はまだまだコーチングの概念が普及しておらず、かつ、自分もコーチングの価値をうまく伝えられない時期だったので、とにかく多くの人に体験してもらえたら何か起きるんじゃないか……という思いで日々実践していました。

──もし、社長にコーチングして、ネガティブな反応だったらどうしていたと思いますか?

コーチングに出会って、僕はこれが天職だと思ったんです。60歳でもやっているだろうな、という感覚を初期の段階で持っていました。なので、もし社内でできる可能性が0であれば、会社を離れる選択をしていたかもしれません。

しかし、Sansanはチャレンジに寛容な会社で、社長含め応援してくれる社員がいました。そうして今があるので、感謝しています。

──会社に認定されたコーチング部から一歩進んで、正式な制度に変わったきっかけは?

当時の人事部長と社長による経営合宿で全社的な課題について話し合う機会があり、そこで経営判断が下りました。

このとき、会社として「課題は何か、それをどう解決するか」という問いから、「この会社の伸び代は何か」という問いに変わり、「社員の心のモヤモヤを解消すること(=コーチングで解消すること)」の必要性が認識され、制度化が決定したんです。その時点で既に多くの従業員がコーチングを体験していたことも影響したと思います。

決まったと知ったときは、非常階段でガッツポーズをしましたね(笑)。求めていたことだったので、すごく嬉しかった。草の根でやっていたことが、ちゃんと認めてもらえた瞬間でした。



──それまではずっと1人で?

はい、ずっと1人で。全社会議で「あなたの人生の目的はなんですか?」と聞いて、少し不審がられてしまったこともあります(笑)。制度化によって、コーチングの効果やメリットについての認知が社内で大幅にアップしました。

──コーチとしてのKPIや成果目標はありますか?

KPIは設定していません。コーチとしては、現時点ではそういったものがなくてもいいのではと考えています。実際、チームのエンゲージメントへの貢献度、成果への影響力が見えにくかったり、体制変更があったりなどして、どうしても数値化することが難しい現実もあります。

ただ、あえていうならば、“満足度”は把握するようにしていて、半期に一度コーチングを受けた方にアンケートをしています。反応として、リピートや引き合いが多く、満足度も高いので、現場メンバーによって支えられている制度です。

そのほか、学生を対象としたハッカソンや内定者研修など、採用に関連したところでチームビルディングコンテンツを受け持つことがあり、会社へのエンゲージメントを高める活動には寄与できていると思います。
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文=松村映子

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