ビジネス

2021.10.28 10:00

宇宙という特殊環境だからこそ、新たな好奇心が芽を出していく


為末:それから宇宙飛行士の方たちの身体的な変化についても興味はありますね。私は身体を通じて人間を理解するというのをライフワークにしています。歩くという行為は、極めて無意識的なんです。どうやって歩き始めたか覚えている人はいないですよね。気がついたら歩き始めている。走るっていうのは、その無意識の世界に手を突っ込むようなスポーツなんです。人間の身体動作のどこまでが無意識で、どこからか意識的なことなのか。もっと言えば、意識的ってどういうことなのか。でもそれは競技者だけでなく、日常生活の中にもあることなので。

重力のない閉鎖空間っていう極限的な状況で、人間はどうなるのか。ウサイン・ボルトが無重力状態で走っている映像を見ましたが、結構足が遅かった(笑)。やっぱりボルトといえど、地面に足がつかないとあんまり速くないんだと思って。そこで重力という当たり前の存在に気づくんですよね。極限状態に行くほど、いろんな枠組みや前提を外して、発見できることがあるだろうなと思うんです。

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今回搭載される超小型衛星の1つ、TeikyoSat-4の試験に立ち会う金子グループ長(写真右)

金子:あらゆるケースを想定して計画通りに行うというのがJAXAの宇宙開発の大前提ですが、実際にやってみたら全然違うかもしれないプロジェクトもありますね。もちろん予想は立てますが、実際にやってみないとわからない。宇宙には、そういう可能性がまだまだあるはずで、このプログラムは今後7号機まで続くので、これからもっと新しい宇宙利用のミッションを発掘して実証していきたいなと思っています。


●Profile

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為末大
元陸上選手
広島県出身。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400mハードルの日本記録保持者(2021年9月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。Youtube為末大学(Tamesue Academy)を運営。国連ユニタール親善大使。最近は、釣りを研究中。photo by Deportare Partners

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金子豊
JAXA研究開発部門
革新的衛星技術実証グループ グループ長
長野県出身。革新的衛星技術実証2号機、3号機のプロジェクトマネージャ。月惑星探査の研究、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の開発、超低高度衛星技術試験機(SLATS)の開発などを経て、現在に至る。趣味は旅行(特に温泉好き)。

※著作権表記のない画像はすべて(c)JAXAです

JAXA’s N0.85より転載。
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取材・文=村岡俊也

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