私が子どものプログラムで一番大事にしているのは、今の自分と明日の自分の限界は違うかもしれない、どんどん広がってもっと遠くに行けるかもしれないという感覚です。その感覚がどの世界においても大事だと思っています。今の自分が想像しているよりももっと遠くに自分はいけるかもしれないと思えることが、あらゆる夢の原動力になると思っています。
金子:実際のロケット打ち上げを見るという体験も、あるいは感覚や価値観、可能性を広げる、という意味においては同じかもしれない。今はコロナ禍なので現地では難しいですが、メディアを通してリアルタイムで見るだけでも宇宙を身近なものに感じられるはずですから、ぜひ多くの方に打ち上げを見てほしいですね。
為末:おお、それは確かに意識レベルで影響があるでしょうね。きっと新しい感覚が開かれると思います。
機体公開で説明をする金子グループ長
宇宙でオリンピック? 極限だからわかる可能性
金子:為末さんの活動で衝撃的だったのは、2007年に開催した東京丸の内で「東京ストリート陸上」です。社会に陸上競技をアピールするために、競技トラックを飛び出して、丸の内で開催するという発想は、どこから浮かんできたんですか?
為末:きっかけはクイズ番組で賞金を獲得したことなんですけれども(笑)、根本にはグラウンドに観客が来ないという問題があったんです。だったら、人がいるところに持って行こうと。グラウンドの中で陸上が行なわれる、という固定概念が崩れることに興味があります。なので宇宙空間でやるスポーツ、重力を前提にしていないスポーツってどういう形になるんだろうと想像したりしますね。バスケットボールのリングもきっと違う形になるのかなとか(笑)。宇宙スポーツを開発してみたいですよね。
2007年、為末さんは東京・丸の内で陸上競技を実演するイベント「東京ストリート陸上」をプロデュース。自らも参加選手として、ハードルを飛んだ。photo by Deportare Partners
金子:それは面白い。いつか宇宙ステーションでオリンピックを行う日が来るかもしれない。