経済・社会

2021.09.30 07:00

自民党総裁選挙と考えるべき財政政策

伊藤隆敏の格物致知

伊藤隆敏の格物致知

9月29日、自民党新総裁は岸田文雄氏に決定した。


菅総理が自民党総裁選不出馬を決めた要因では、世論調査による内閣支持率が30%以下になったことが大きい。菅総理は自民党総裁選での再選は難しい、たとえ再選されてもその直後の衆議院選挙での自民党単独過半数の獲得が難しいかもしれないという予測があった。

党内でも若手を中心に、総選挙で確実に議席を確保できる「自民党の顔」として菅総理以外を推す人が増えていたといわれている。菅総理の不出馬が伝えられたあと、日経平均株価は大きく上げて、3日の終値は前日比、500円(2%)以上の値上がりとなった。大幅株高傾向は、週明けも続いている。

菅総理の支持率下落の最大の要因は、コロナ対策の失敗だろう。日本政府のコロナ対策の問題点はこのコラムで繰り返し書いてきたので省略するが、誰が新総理になっても、当面はコロナ対策が最大の課題であることには変わりない。

菅政権下での経済政策は、携帯電話料金の値下げ、デジタル庁の創設が主要なものである。財政政策では今年1月、令和2年度第3次補正予算で、総額15兆円の大型の経済対策をまとめている。菅総理は、コロナで打撃を受けた旅行業界、飲食店業界の回復を助けるために、Go Toトラベル、Go Toイートのキャンペーンの推進に熱心で、感染抑止を重視する人たちからは、コロナを全国に拡散させるひとつの要因となったと批判された。

本稿では、誰が次の総理になっても取り組まなくてはいけない、財政政策について考えてみたい。自民党総裁候補者はこれから、討論会や公約づくりで、財政刺激策の「規模」を競うのではないかと予想される。しかし、いま重要なのは、規模の大きさではなく、景気浮揚に一番効果的な支出項目に予算を付けて、迅速にそれを執行していくことだろう。規模ではなく内容の良し悪しが問われるべきである。理由は三つある。

第一に、昨年来の景気後退とそこからの回復の過程では、業種間格差、個人間格差が鮮明になった。巣ごもり需要を取り込んだ、テクノロジー系や電気機器の業種、オンライン・ゲーム業界は大きく株価を上げてきた。さらに、海運(貨物)の株価も上昇が顕著だ。

一方、空運、陸運(鉄道)などは株価が低迷したままである。好況、好業績にある業界や会社を支援する必要はない。不況業種の支援は必要だが、単なる所得補償による延命ではなく、医療崩壊などコロナの危機的状況脱却後のニューノーマル(ウィズ・コロナかもしれない)に向けて業態転換を図る構造改革を後押しする政策が求められている。自民党総裁候補者には、このアイデアを競ってほしい。
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文=伊藤隆敏

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