Forbes JAPANでは、これまでの考え方や既存のシステムを超えて活躍する女性にフォーカスした企画「Beyond Systems」を始動。約3カ月にわたり、翻訳コンテンツを含めたインタビュー記事を連載していく。
「顧客視点の金融を再設計したい」──そう語るのは、テクノロジーやデータを活用し、新たな顧客体験や金融サービスを提供するJapan Digital Design(JDD)の代表取締役・河合祐子だ。
他の業界に比べて女性役員の割合も低く、まだまだ男性優位とも言われる金融業界で、今年3月に発表された河合のトップ就任は話題となった。
長年にわたって金融ビジネスの第一線で実績を積み上げてきた河合は、自身のキャリアをどのようにとらえているのか。彼女をトップへと導いた「仕事の流儀」とは──。
金融をもっとバリアフリーに
河合は大学卒業後に外資系金融機関に就職。独立系シンクタンクを経て、2003年に日本銀行に入行。高知支店長、香港事務所長、女性として2人目となる欧州統括役、FinTechセンター長などの要職を歴任。そして昨年11月、18年弱勤めた日銀からJDDへの転身を決めた。
JDDは、三菱UFJフィナンシャルグループのデジタルR&D部門を切り出すかたちで、2017年に設立された若い会社だ。「金融の新しいあたりまえを創造し人々の成長に貢献する」というミッションを掲げる。
「私はかねてから、金融業界は(サービスやシステムを)顧客視点で再設計すべき時代にきていると感じていました。いまはどんなサービスも、パーソナライズとカスタマイズによって便利に進化している。金融だってそこを目指していいはずだと。私はその『新しい金融』を実現したくてJDDに来たんです」
これまで、大手金融機関は、「全国民が顧客」と言えるほど幅広い利用者を抱えてきた。それゆえに、顧客それぞれの属性やニーズを活かしきれず、サービスに不便さを生んでしまう場合があったと河合は指摘する。
「みなさんが金融を意識するのって、何かやりたいことがある時ですよね。事業を始めたいとか家や車を買いたいとか、やりたことが先にあって、その後に決済や融資がついてくる。この手続きが障壁となって、なかなか一歩を踏み出せないことがある気がするんです。
その心理的な壁を取り払いたい。やりたいことを進めていくと自然と金融が付いてくる、息をするように利用できる、そういうサービスを実現したいと思っています」