リクルーターとして人材採用に携わっている筆者は、その経験から、長期にわたって労働市場に参加していなかった人は、いざ復帰しようとしてもなかなかうまくいかないことを知っている。たとえ再び働き始めたとしても、新しい職位は以前と比べてかなり低くなってしまうことが多い。
米国では以前から、今の時代にマッチした適切な家族休暇や病気休暇を連邦レベルで導入するべきだという要求があった。新型コロナウイルスの感染拡大によって、リモートワークやハイブリッド勤務、デジタルノマドといった働き方が広く受け入れられ、Zoomをはじめとしたビデオ会議ツールが活用されるようになった。通勤せずに働けるようになった今こそは、新たな家族休暇制度を法制化させるべきタイミングかもしれない。
経済協力開発機構(OECD)がまとめたデータによれば、OECDや欧州連合(EU)に加盟する41カ国のなかで、有給の産休・育休が法制化されていないのは米国だけだ。41カ国の大半では、最低でも12週間ほどの有給の産休・育休を取得することが認められている。平均は20週間だが、米国はゼロだ。
比較のために例を挙げると、先進国のノルウェーは、支払われる賃金の割合にもよるが、子どもが生まれた労働者は、52週以上の有給育児休暇をとることができる。日本にも育児休業給付金の制度があり、52週以上の取得が可能だ。
しかし、米国の状況はまもなく変わるかもしれない。米連邦議会では現在、労働者の大半が12週間の有給の医療/家族休暇を取得できるようにする法案が審議されている。「Build Back Better Act」と名づけられたこの法案は、民主党による3兆5000億ドルの人的インフラ投資計画の一環であり、最長12週間の有給での医療/家族休暇制度を一般化することが含まれている。
新生児の育児や医療上の緊急事態に対処するために休暇を取得できるようにするこのプログラムは、ビジネス・インサイダーによれば、2023年からスライド制で導入されていく予定だ。