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ポストラグジュアリー 360度の風景

ユナイテッド・アローズ上級顧問の栗野宏文氏

世界のラグジュアリーはどこに向かっているのか? また、日本のラグジュアリーが世界で認知されるのはどうすればよいのか? 安西洋之さんとともに新しいラグジュアリーを360°の視点から探り続けてきた連載の第10回は、ユナイテッド・アローズ上級顧問の栗野宏文さんにお話を伺いました。

世界のファッションシーンで最も影響力をもつクリエイティブディレクターのひとりとして業界を俯瞰している栗野さんが見る、今後ファッション、ラグジュアリーの行方とは。

【前編】きらびやかなラグジュアリーの終焉とLVMHプライズという才能探し


中野:どうしたら日本のブランドは世界に出ていけるでしょうか?

栗野:世界に出るための条件のひとつとして、文化的収奪に敏感であることが挙げられます。ただ、初めからすべて教育しなくちゃダメというならだれも出ていきません(笑)。出ていく過程のどこでどうするのか、10箇条みたいなことを出すのか、考える必要がありますね。

安西:伴走して、気づいた人が指摘していかないといけないでしょうね。

栗野:グローバル・コミュニケーションマネージャーがとても大事になってきます。例えば、ソーシャルメディアでは、簡単につくって簡単にアップできます。うけるとあっという間に1000万人に届くようなイージーサクセスの世界。だから若い子は飛びつきます。しかし、本人がクリエイティブだと思っていても、しょせん小器用なだけ、という場合も多い。そこから先、本気で世界に認められていこうとすれば、カルチュラル・リテラシーがとても重要になってきます。

安西:伴走する人、メンター的な人はどのようにカバーすればよいのでしょう。例えば、中央ヨーロッパのファッションウィークですとフォローアップの制度があり、20人くらいのデザイナーに対しメンターが一人で面倒を見る例もあるようです。参加するデザイナーの8割がハンガリー出身で、彼らは複雑な歴史から文化的リテラシーが高いためこの規模でもよいとして、日本ではデザイナー5人に対しメンターが一人というくらいの規模が適正かなと思いますが、いかがでしょうか?

栗野:どういう教育を受けてきたかによりますね。Z世代はダイバーシティに敏感ですからそれでよいかもしれません。50代半ば以上の人は、ダイバーシティに関する教育を受けてきていないし、そもそもカルチュラル・リテラシーの発想がない。いざ教えるとなると大きな規模感で取り組む必要がありますね。

ハンガリーはヨーロッパにおけるものづくり国です。文化的なことをわかってないと、ものづくりはできません。昔はメイド・イン・イタリーやメイド・イン・フランスが主流でしたが、EUができてからはメイド・イン・EUが増えています。クロアチア、ルーマニア、ユーゴスラビア、スロバキア、スロベニア、ハンガリーで作っているケースが多いですね。メイド・イン・ハンガリーは多い。日常的に、自分以外の国についての知識があります。

ベルギーも同じです。ベルギーが“アントワープの6人”を輩出したのも、ベルギーが小国だったからですね。


アントワープ王立芸術学院出身のデザイナー「アントワープの6人」の1人、ドリス・ヴァン・ノッテン(Getty Images)

フランス以外で勃興する新しいラグジュアリー


安西:そういう意味で新しいラグジュアリーがフランス以外で出てくるという見立ては、適当だと思われますか?

栗野:思いますね。フランスにも新しい感性の持ち主はいますが、応援する側のほうがまだ権威主義的です。未だにフランスは自分たちが世界の中心だと思っています。ノートルダムの焼失問題でもすぐお金が集まりましたが、一方で、ご飯も食べられない人がいるのになんだ、という批判もありました。フランスは文化遺産で食べているという自覚があり、そこにいちばんお金が集まります。

文=中野香織

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