ほとんどの市町村で用意された予約手段は、電話とインターネットだった。ところが、コールセンターの回線数に限界が生じた。全国で同時期に接種が始まったので、コールセンターのオペレーターや設備の争奪になったからだ。
神戸市では、4月20日から75歳以上の高齢者約24万人の予約受付を始めた。コールセンターでは最大120回線を準備したが、最初の週は電話がオペレーターにつながる応答率が1%台になる日もあった。
しかし現実はもっと深刻で、応答率は電話交換機(PBX)への着信が分母となるので、ダイヤルした瞬間に切れる交換機に着信しない電話はカウントされない。「500回以上かけたのにつながらない」という苦情を言うために、市役所を訪れた方もいたほどだ。
一方、高齢者にとって、インターネットを使っての予約はどうしてもハードルが高くなってしまう。総務省の情報通信白書(令和2年版)によると、80歳以上のネット利用率は57.5%とかなり高くなっているのだが、実際にはワクチンの予約サイトはわかりにくい場合も多く、難易度が上がってしまうだろう。
家族や身近に予約を手伝ってくれる人がいればいいが、そうでなければインターネットではなく電話をかけ続けることになる。そうなると接種自体をあきらめようとする高齢者すらでてきてしまうかもしれない。
混乱の中でスタートしたお助け隊
そんな状況を考慮して、神戸市は、区役所などの会議室に大学生などのボランティアを配置し、訪れた高齢者に代わって学生たちがインターネットで予約を行う「ワクチン接種申込お助け隊」をスタートさせた。8月までの約80万件の予約のうち、約14万件がお助け隊によるものであった。ピークでは1日で約4000件の予約を代行することになった。
お助け隊を発案したのは久元喜造市長だ。75歳以上を対象とすれば電話回線がパンクするのが容易に想像できたため、高齢者の方にネット予約を選択してもらうための方策はないかと考えた。そこで、ネットが苦手な高齢者の方を学生がサポートするという「ワクチン接種申込お助け隊」が生まれたのだ。
ネットに慣れた学生たちの助力を確実に得るために、有償のボランティアとしたので、彼らからすれば、緊急事態宣言下でアルバイト先の飲食店などが休業するなか、貴重な収入確保の場になるかもしれない。
とはいえ、お助け隊は波乱の幕開けであった。ワクチン接種を担当する部署が人手不足だったので、お助け隊に参加した学生たちには十分な情報が与えられないままスタートした。トラブルにどう対応するのかの指示もなかった。