地方発イノベーションの秘訣

キブコールド・グループのCOOを務めるサムエル・イマニシムエ

現在もなおアメリカ西海岸のシリコンバレーはイノベーションの震源地だ。日本にはシリコンバレーのような新しいビジネスが次々と生まれるエリアは誕生するのだろうか。

そんなエリアができるのなら、国としてそこに資源を集中投下すべきだろうと、昨年7月、内閣府が東京や京阪神など8つの地域を、スタートアップ・エコシステム拠点都市に選定した。

これをきっかけに、全国各地の自治体も、次代の経済成長の鍵を握るのは新しいビジネスを生むスタートアップだと考えはじめ、その育成にしのぎを削っている。東京だけでなく、地方でもスタートアップが注目される時代が訪れている。

国連機関が神戸にスタートアップ拠点を開設


国内では民間企業や自治体が行うスタートアップ育成事業が数多くある中で、国連機関が行う国内でたった1つの育成事業が注目を集めている。

実施しているのはUNOPS(国連プロジェクトサービス機関)という、一般の方には馴染みが薄いかもしれない国連機関だ。もともとはUNDP(国連開発計画)の調達部門であったが、1995年に独立。他の国連機関や開発銀行や政府の要請により、人道支援や開発支援などのプロジェクトの実施をしている。

国連機関としてよく耳にするUNESCO(国連教育科学文化機関)やUNICEF(国連児童基金)が、それぞれ「教育、科学、文化」や「子どもの権利」と活動分野が限られるのに比べ、UNOPSはあらゆる分野で活動する。

それゆえ、他の機関では手に余る仕事も多く引き受け、いまやプロジェクト推進のプロ集団となった。特に災害現場での抜きんでた迅速さと行動力は高く評価されている。そのことを裏付けるように、この10年間で予算額も約2倍となっている。

このUNOPSが昨年11月、世界では3カ所目となるスタートアップを育成する拠点「グローバル・イノベーション・センター(GIC)ジャパン神戸」を神戸市に開設したのだ。

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昨年11月に開設したUNOPSのイノベーションセンター

UNOPSによる起業家育成が注目をされるのは、単にビジネスを生むだけでなく、貧困や食料不足といった大きな問題を解決して、苦しんでいる人々の暮らしを改善する事業を生み出そうとしているからだ。

UNOPSは「GICジャパン神戸」開設に先駆けて、昨年2月には日本のソニーとともにイノベーション分野における協業を開始。4月には「テクノロジーを用いた強靭なインフラづくりによる気候変動への対処」をテーマとした、グローバル・イノベーション・チャレンジへのアイデア募集を国内外のスタートアップに呼び掛けた。

これには世界98の国と地域から624社の応募があり、6社が採択され、UNOPSが途上国での実証事業や投資家からの資金獲得を支援し始めている。

無電化地域でのコールドチェーン構築


採択された企業の1つが、アフリカのルワンダ共和国と日本の企業による合弁企業「キヴコールド・グループ」だ。COOのサムエル・イマニシムエ氏に話を聞いた。

「ルワンダでは、国土の半分しか電力網が整備されていません。農業は盛んなのですが、収穫された野菜や果物は、常温で保管・輸送されるので、約4割が店頭に並ぶ前に腐ってしまいます。

例えば野菜を朝に収穫して麻袋に入れます。お昼ごろにトラックに積み込むときには、赤道直下の日差しで痛みはじめるのです。輸出できるフルーツもあるのですが、思ったとおりの定価で売れるのは、たったの3割です」

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ルワンダの首都キガリの街並み

サムエル氏の話によれば、ルワンダは先進国とは全く異なる種類の「フードロス」の問題に苦しんでいるというのだ。

文=多名部重則 

アフリカ
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