「今、ベトナムはロックダウンで、去年の3月に操縦したのが最後なのですが──。今や、経営の仕事はオンラインでもできます。私がベトナムで飛行機を操縦している間、社員は自由にできて、それも息抜きでよいのではと」
実は、福井氏は、今回話を聞いた購入者3名の中では、唯一の「既婚者」だ。そして、実は応募したことは、妻には話さずにいたという。
「当選したときにどこで使うか迷い、妻に、『家に置く?』と聞いたところ、『邪魔だからそれはイヤ、会社に置いて』と言われました(笑)。それで座席は、社員面談のときに社員を座らせるのに使っています。ちなみに妻には『いくらしたの?』と聞かれて、70万円と答えたところ、呆れてニヤニヤしていました」
購入したシートは、社員面談のときに社員が── 写真:ETHOS phtograph 天野雅也
航空の世界に『なにかしらで関わりたい』ファンがいることの証左
では福井氏は経営者として、ANAのコレクターグッズ販売企画の「マニアック」「ニッチ」「レア」をキーワードに訴求、といったマーケティング戦略をどう感じるのか。
「私自身はやはり、マス向けの、より広く需要をすくいとるビジネスを心がけているので、なかなか思い切った戦略だなあ、とは思います。でもANAさんにとっては、『自社のファンがいること』を実感する、大切な指標となったのではないでしょうか。
なによりも、航空機ファンの存在を知るきっかけにもなり、企業としてのパーパス(『目標』)を確認するよい機会になったのだろう、と思いますね。なによりも、応募者が多く、大人気企画となったのは、『空の旅ができない』現在のような状況でも、航空の世界に『なにかしらで関わりたい』と思う人が多いことの証左でもあるんですから」