「シートは社長室に。面談で社員を座らせる」
国際線プレミアムエコノミークラス(777-300ER)モックアップシート2席タイプ、いわゆる機内の座席を70万円で購入した福井氏は、なんと「パイロットと経営者の二足のわらじ」を履くという人物だ。
ホームページの企画・制作などを主管事業とする自社「ウェヴァード」のオフィスに「滑走路」をしつらえるほどの航空好きである。
福井雅樹氏が経営する「ウェヴァード」のオフィス 写真:ETHOS phtograph 天野雅也
学生時代から航空業界には憧れがあった。しかし、時は就職氷河期真っ只中。ANAやJALでパイロットになるには、自社養成のコースで採用されるか航空大学卒業生になるしかないが、当時、もともとの狭き門はますます門戸を閉ざしていた。あきらめたものの、大学時代はJALの国内線予約センターでアルバイトをしていたほどで、原初の憧れは潰えなかったという。
福井雅樹氏。ベトナムの航空会社「ベトジェット」の副操縦士でもある 写真:ETHOS phtograph 天野雅也
そして、23歳の頃、「iモード(世界初の携帯電話IP接続。NTTドコモ対応の携帯電話でのキャリアメールの送受信やウェブページ閲覧などが可能だった)」などが話題になったものの、まだPCが日常生活からは遠かった時代。出会ったシステムエンジニアの知人にも助けられ、独学でHPの制作を始め、2004年には「ウェヴァード」を会社登記する。
会社社長になったものの──
だが、会社を興して3年ほど経った頃、パイロットになるには「自費でライセンスを取る」方法があることを知り、アメリカとの間を何度か往復して自家用小型機の免許を取得する。
写真:ETHOS phtograph 天野雅也
そして2011年、東日本大震災が襲った。福井氏は回顧する。「会社の売上が半分くらいに落ちたんです。不安を感じ、会社経営以外に身を立てて行く方法を模索すべく、まずはバスの免許を取りました。さらに、より好きな道で、じゃあエアバス免許も? と考え、2016年にはフィリピンに数カ月滞在して『エアバスA320』の操縦資格を取得しました」。そして2017年、ベトナムの航空会社「ベトジェット」に副操縦士として採用されたのだ。
その後、月に3〜4回ベトナムに渡り、副操縦士として勤務。自ら飛行機を操縦して日本に帰国、またベトナムに行く、などすることもたびたびだったという。