ANU研究チームのキーン・チャーン・フォン(Kean Chern Fong)博士は、こう話している。「両面セルを従来の太陽光発電所に配置すれば、直射日光を吸収すると同時に、地表で反射される日光も活用できる。これにより、発電量を30%程度まで増すことができる」
ANU研究チームは、革新的な「レーザードーピング」プロセスを用いて、表面と裏面のエネルギー変換効率を大幅に高め、96.3%の両面発電係数(表面に対する裏面の変換効率比)を達成した。
ANUによれば、この両面セル全体での実質的な発電効率は29%で、一般的な片面セルを大きく上回るという。
多くの発電効率技術のルーツは、1960年代の人工衛星技術までさかのぼるが、両面太陽電池も新しいものではない。カナディアン・ソーラー(Canadian Solar)などトップレベルの製造会社は、裏面によって出力を30%増やせる400Wのパネルを提供している。
中国では、青海省にある2.2GW規模の太陽光発電所で両面太陽電池が使われていると報道されている。この施設は、今のところ世界最大規模の太陽光発電所で、その高い効率は、太陽の角度に合わせて回転する太陽光追尾式架台(トラッカー)と結びつけられることが多い。
両面パネルには、必要とされる動きの度合いが小さいという利点がある。そのため、トラッカーの複雑さを軽減できるので、必要な設備がはるかに少なくなる。膨大な額のコストを削減できるうえに、エネルギー効率も5%向上する。
世界4位のトラッカー輸出業者である中国のアークテック・ソーラー(Arctech Solar)は、新たな設計に基づく同社製品により、採算のとれる太陽光発電プロジェクトの数が増えると予想している。同社は、2022年に予定されている上海証券取引所での新規株式公開(IPO)を前に、輸出が順調に伸びると期待している。