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オトコが語る美容の世界

介護美容を行う箱石志保さん

コロナ禍の中で、なかなか地方にいる親や祖父母に会えない友人も多い。コミュニケーションが減り、認知症がはじまってしまった家族を抱える友人もいる。

人生100年時代。そして、超高齢化社会。現在、シニアと美容はどうなっているのか? 医療なのか美容なのか? 将来性はあるのか。「介護美容」というジャンルで切り取ってみた。

老人ホームでの気づき


昔、地元の福祉協議会と協力して、特別擁護老人ホームの入居者のシャンプーや爪切りのお手伝いをしていたことがある。担当したのは重度の入居者で、会話ができず、ほとんど寝たきりのようなお年寄りが多かった。そこの施設はとても環境が良さそうだったが、それでもヘルパーさんが全ての作業に注力するのは難しく、結果、女性入居者の髪形は短髪、洗いざらしっぽいところが多かった。

入居者のご家族から「おばあちゃまは髪の毛が美しかったが、入居したあとに会いにきたら散切り頭でショックだった」という話があったようで、私が尋ねたのは、生活の質を向上させる取り組みの一つだった。

美容師や美容関連のスタッフで担当すると、やはりどのような年齢、見た目の入居者であっても、美しくしたくなるのが職業プライドである。巻き爪も綺麗にし、髪を何度も何度も専門のブラシで解くと、それは見違えるイメージになる。しかし、残念なことにご本人の反応はなかった。



入居している部屋を覗くと、花もなく、絵もかかっていない。ここも改善したいと提案したら、施設の方に「花は食べちゃったりする方もいるので置いていません」と言われ、現実にそれなりのショックを受けた覚えがある。

それでも、施設の方から「あの入居のおばあちゃん、ヘアカットとスタイリングをしてもらっていますが、それをしてもらった日は、元気で体温も少し高めなんですよ。もしかしたら気づいているのかも知れませんね」なんてことを聞き、家で「レナードの朝」(実話をもとに、治療不能の難病に苦しむ患者とその治療に励む医師の姿を描いたドラマ)を見返したりした。

さて時代も流れ、現代では「介護美容」というジャンルも出てきた。私の知り合いにそれを専門としている箱石志保さんという方がいる。

彼女曰く、入居型施設の利用者の中の一人に、自身の部屋にこもりがちで、ひどい腰痛も訴える方がいたらしい。箱石さんが何度か美容施術を通して分かったことは、施設スタッフの人員不足により、個別ケアができなかったり、またそれを本人が察してしまい、外に出にくいという状況にあったりした。


箱石志保さん(@kaigobiyou_haru

彼女が美容という“柔らかい”切り口で入っていくと、いつもと違った会話が生まれ、居室は寂しいと吐露されたこともあるという。また、施術中の1時間半の間は座位が可能で、痛みの訴えがなかったことから、腰痛は既往の圧迫の影響よりも、孤独を感じるような心因的要因が関与している可能性が高いとも予測できたらしい。

文=朝吹 大

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