これらは、コロナ禍によってリアル店舗での流通が減り、ECが伸びているという証左でもあるが、資生堂にしろ、コーセーにしろ、これまで展開してきた低価格帯の商品を捨て、注力するなら高価格帯の商品だという決断の表れでもある。
2018年にECからスタートしたメンズスキンケアの「バルクオム(BULK HOMME)」というブランドがあるが、わずか数年で、1兆円企業である資生堂のEC部門の売り上げを抜いてしまった。資生堂のEC部門は、まだ100億円以下の売り上げしかない。コロナ禍によるECの伸びはバルクオムの躍進からもわかると思う。
売れない口紅、伸びる男性向け商品
また、パソコンを苦手としてきた高い年齢層の人も、日常生活でITをそれほど活用していなかった地方の人も、感染リスクを下げるECやキャッシュレスサービスを好むようになり、デパートの化粧品売り場で買う機会も減ったはずだ。丁寧な接客を受け、色やテクスチャーを試して……というのもあまり見られなくなった。
化粧品でいえば、マスク着用が当たり前となり、口紅が売れないのは仕方がないだろう。
頻繁にマーケティング調査を発表している化粧品メーカー、マンダムによれば、マスクの着用によって、目の周りの美容が伸びているそうだ。しかも、これは女性に限ったことではない。男性も自分の顔の「映え」を気にしはじめ、洗顔やヘアスタイル、眉カットに関する商品に対するニーズが増えているそうだ。顔を引き締める鍼灸も人気を集めているという。
興味深いのは、Zoomなどでの会議が増えたことで、多くの女性が同性の視線を気にして美容を行う一方、男性は異性の視線を気にしてケアをしているということ。日頃鏡を見なかった男性も、オンライン会議で自分の顔に向き合う時間が増えたことで、美容意識が高まっているとも聞く。