そのなかには、サンゴ礁の壊滅的な打撃や多くの昆虫種の生息環境の消失が含まれています。また、世界人口の3分の1以上が少なくとも5年に一度の割合で異常な猛暑に見舞われるとの予測も示されています。
世界の平均気温が2℃以上上昇すれば、地球の環境は計り知れない影響を受ける。(イメージ: Australian Climate Council)
気候変動の影響による水ストレスの問題も拡大の一途をたどっていますが、NASAによると、世界の平均気温の上昇を2℃ではなく1.5℃に抑えることができれば、気候変動に起因する水ストレスに悩まされる人の数を半減できるとのことです。具体的な数字では、2050年までに1億8400万人から2億7000万人が水ストレス問題から逃れることが可能になる計算です。
その一方でNASAは、世界の平均気温の上昇が2℃に達すれば、世界の一部では危険なレベルの降水量を記録し、今年7月中旬にヨーロッパの一部で甚大な爪痕を残したものに匹敵する洪水を引き起こす恐れがあることも指摘しています。
科学者も活動家も、地球温暖化の最悪のシナリオを回避するには、二酸化炭素の排出量を削減すると同時に、その最善策として世界のエネルギーシステムを再構築するための抜本的な対策を講じる必要があるとの意見で一致しています。世界経済フォーラムの「効果的なエネルギー転換の促進2021年報告書」では、世界115カ国のエネルギーシステムの動向についての調査結果が公表されています。それによると、エネルギーシステムで着実な改善がみられるのはわずか10%にすぎません。
同報告書によると、世界の経済大国トップ10のうちでエネルギー転換を効果的に推進している国のトップ10に名を連ねたのは英国とフランスだけでした。化石燃料の消費量が世界でも最大クラスの国で十分な進展がみられないことがエネルギーシステム改善において大きな懸念材料となっていると同報告書は指摘しています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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