過去のIPCCの報告書の共同執筆者であり、オックスフォード大学で地球システム科学の教授を務めるマイルズ・アレン氏は、1.5℃という目標は「物理的、技術的、そして経済的にも達成可能」としています。
アレン教授は、2018年に執筆した英国王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)への寄稿文のなかで「世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという目標を達成するには、世界全体のGDPの約2.8%を2050年までにエネルギーシステムに投資する必要がある」と語っています。
「1.5℃という目標がなかったとしても、世界のGDPの約2%をエネルギーシステムに投資することになるでしょう。エネルギーはどのみち賄っていかなければならないため」
世界の平均気温上昇の現状
IPCCは、人間の活動による気温上昇は、2017年の時点で産業革命以前に比べて約1℃(0.8~1.2℃の間である可能性が高い)であり、現在は10年につき0.2℃の割合で上昇を続けていると警鐘を鳴らしています。
これらの上昇値は世界の平均値であり、一部の地域ではこの平均値を上回る温暖化が起きています。IPCCによると、世界人口の20~40%が、2006年から2015年の間に少なくとも一つの季節で1.5℃以上の気温上昇を経験したとのこと。温暖化の進行度には地域によってばらつきがあるのです。
米国航空宇宙局(NASA)が公表した報告書「懸念すべき温度:なぜ世界の気温変化を注視すべきなのか」には、「気温の上昇速度は、地域によって異なり、一般的に海よりも陸の方が上昇値が高い。温暖化が最も顕著に現れているのは、寒冷な季節の北極圏と温暖な季節の中緯度の地域である」と記されています。
世界の平均気温が産業革命以前に比べて、1.5℃上昇した場合と2℃上昇した場合の夜間の平均最低気温の変化の予測(イメージ: A Degree of Concern: Why Global Temperatures Matter, NAS)
温暖化を食い止めるための行動
すでに述べたように、IPCCは、気温上昇が2℃に達すれば夏の北極海では海氷が消えるという現象も珍しくなくなっていくと懸念しています。このまま温暖化に歯止めがかからなければ、その他の異常な気象現象の発生も避けることはできません。現に、さまざまな異常気象がすでに観測されています。
世界の平均気温が2℃上昇した場合に発生するとみられる気候や天候によるその他の主な現象は、オーストラリアの非営利団体である気候評議会によっていくつか指摘されています。