今はスマホを開けば、いつどこにいてもリアルタイムでやりとりができ、SNSで全世界の人たちと気軽に繋がれる。超高速5Gが広がり、時代は「速さ」を追及している。
即レスも既読スルーもない世界
一方、せわしなく流れていく現代のスピード感についていけず、距離を置きたくなる人も少なくないだろう。秒単位で反応しあうメッセージより、じっくり時間をかけて気持ちを整理しながら打ち明けるコミュニケーションの方が必要だと感じるときもある。そんなときに心の拠りどころとなってくれるアプリがあるという、サービス名は「SLOWLY」だ。
「SLOWLY」は全世界の人たちとさまざまな言語で手紙を送りあえる香港発のペンパル・アプリ。自分が話せる、もしくは勉強中の言語を設定すると、自動的にマッチングされた人とアプリ内で手紙を送り合うことができる。外国語を勉強するために利用している人も多い。
他のペンパル・アプリと「SLOWLY」の最大の違いは、ユーザー同士の物理的な距離によって、手紙が届く時間が変わることだ。日本から韓国は約3時間、ロサンゼルスまでは約1日。最も遠い南米大陸に送ると、なんと2日ほどかかる。
SLOWLY 公式HPより
レビュー数は1万件を超え、評価は4.6
「届くのに時間がかかる上に、見知らぬ相手とやりとりをするなんて、そんなアプリを好んで使う人は果たしてどのくらいいるのだろうか」と懐疑的に思った人もいるだろう。しかし実際のところ、現時点でのApp Storeのレビュー数は1万件を超え、評価は4.6という高評価を獲得している。
これは、スピード感のあるメッセージが当たり前の世の中に対して、「SLOWLY」のようなあえて「遅い」アプリを求めている人たちが多く存在するということだ。
実際「SLOWLY」のアプリレビューには「親しい人には相談できない悩み事を話すことができる」、「早く返信しなきゃと気負う必要がないので、気持ちを楽にして文化交流ができる」などの肯定的なレビューが多数寄せられている。
「地球の裏側から手紙が届く不思議さ」
「The Stranger on The Train Phenomeno(『汽車で乗り合わせた他人』現象)」という心理学の見解がある。これは見知らぬ人には自分の心の内をかんたんに打ち明けられる現象のことを指す。「SLOWLY」の場合、厳密には汽車での会話ではなく、アプリ上のテキストメッセージだが、「SLOWLY」を通じて出会った遠くに住む友達に何から何まで悩みを打ち明けて、励まされたという経験をしたことがある人は多いようだ。