「使えない」の一言から生まれたLegalForce
──創業当初の事業は現在のAI契約書レビューとは違ったとお伺いしました
創業当初の10カ月間は契約書に特化したエディターを開発していました。誤字を自動的に直したり、コメントを一元管理できるようなものを構想していたのですが、β版が出来上がり、小笠原に見せたときの感想は「使えない」というシビアなフィードバックでした(笑)。
弁護士がイメージするエディターといえばマイクロソフトのWordなのですが、Wordを超える物をたった10カ月で作ろうとしても無理ですよね。しかもWordとの互換性も無いという致命的な欠陥がありました。確かに「使えない」サービスだったと思います。
今思えば私自身がもっと早く気づくべきだったのですが、開発し始めるとそれが難しく、小笠原の一言でハッと目が覚めました。その一言をきっかけにエディター構想からピボットし、現在のAI契約書レビューサービスの開発に着手することができました。
──なぜAI契約書レビューを選ばれたのでしょうか?
もともと契約書レビューの課題が大きいというのはわかっていました。ただ自然言語処理の技術を使って、実用に耐えうるシステムが作れるかどうかまでは、わからなかったので踏み切れずにいたんです。
一緒にLegalForceをつくるメンバーを集めるなかで、時武(現取締役CTO)と出会い、開発に着手し始めることができました。その後、京都大学からシードシリーズで資金を調達し、京都大学の自然言語処理研究室と共同研究をはじめ、研究室の森教授が同研究者兼技術顧問として参画してくださいました。
そして私が求人者と求職者をマッチングする「Wantedly(ウォンテッドリー)」でたまたまスカウトを送った舟木(現執行役員CRO [研究開発統括] )が時武と同じ研究室出身だったという縁も重なり、彼が副業で手伝ってくれるようになってから、一気にサービスが実現に向けて進み始めました。そして、現在に至ります。なので、私は構想からスタートし、様々な縁が繋がって、今のサービスが生まれました。
──川戸さんがCOOに就任されてから一気にグロースのスピードが加速したようにも思います
初めての資金調達の時、事業計画なんて作ったこともなければ、パワーポイントすらほぼ触ったこともない私は困り果ててしまいました(笑)。そのときに、ベンチャー経営者の方から「優秀な人がいる」と紹介してもらったのが川戸でした。
彼は初めて話した瞬間から理解が本当に早くて、責任感の強さ、判断の的確さも素晴らしいものがあります。仕事を一緒にすればするほど「すごい」と思う人です。現在はCOOとしてサービス開発、組織づくり、資金調達にいたるまで、あらゆるところを切り盛りしてくれています。
私がやるよりもはるかに能力の高い仲間との縁があったからこそ、今の「LegalForce」の成長があります。