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あえて“二律背反”を組織内につくる
──組織づくりについて、気をつけているポイントをお聞かせください。
立場の異なる2人1組ですべての仕事をするようにしています。もう少し具体的に言うと、「二律背反する正義」を1人の中で抱え込むのではなく、2人の責任者同士で納得いくまで議論しながら仕事をすることが良いアウトプットを生むと信じているのです。
経営レイヤーでいうとファウンダーとして私と福本(共同代表)がいますが、私は「価値の責任者」、福本は「マネジメントの責任者」として二人一組で経営しています。
私が「こんなに優秀なクリエイターがいるから採用すべき」と言ったとして、福本からすると「それでは今期の利益目標を達成できなくなる」という正義もあり得ますよね。どちらの意見も正しい、二律背反の状態です。
現場レイヤーだと、ビジネスプロデューサーとクリエイティブディレクター、必ず2人1組でプロジェクトに取り組みます。クリエイティブディレクターが「発想の責任者」であり、ビジネスプロデューサーが「実装の責任者」です。
例えばCM制作をするときに、「有名なタレントを使えば話題になる」という正義と、「有名なタレントを使えば利益が減る」という正義がぶつかることもあるでしょう。このように、あらゆる仕事において二律背反な状況は生まれるのです。
この二律背反した状況を1人で解決しようとすると、どうしても個人によって偏りが出てしまいます。特に私のようなクリエイターはお金や管理に関してはめっぽう弱いですからね(笑)。
なのであえて組織内に二律背反を生む体制をつくり、互いが納得できるまでとことん議論しあい、優れたアウトプットを作り上げていくようにしているのです。
「報酬」重視の人材を採用しない理由
──優秀な人材を集めるために工夫されていることをお聞かせください。
人が組織に惹かれる理由は大きく「思想」と「環境」「報酬」の3つに分けられると思っています。そしてこの3つの全てにおいて合意できた人しか採用しないようにしています。どれか1つでも合致してない人は、入社したとしても長期的には互いに不利益になるからです。
その一方で、積極的に採用しているのは「クリエイティブ」というものの領域を広げるために必要な人材。