「いつも嫌な気分にさせる人」から、むしろ幸福を得るシンプルな方法

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さらに、エイミーは前向きな影響が、自分が思っていたよりはるか遠くまで波及したことにも気づいた。週に一度、父親と会うことになっていた子どもたちが、顔を合わせた両親の言い争いに巻き込まれずにすむようになり、ストレスが和らいだようだった。

また彼女が得た心の平穏は、元夫にも変化をもたらした。まるで彼の怒りの詰まった風船から空気を抜いたような感じだった。嫌みを言われることもあったが、もうそれほど辛辣ではなかった。彼女は久しぶりに、いつか友だちになれる日が来ればと願った。あるいはせめて、共同養育者としてうまくつき合えるようになりたいと思った。

人は「心地よさ」によって行動を変える


最近、あるプロジェクトを手伝ってもらおうと彼女に電話したところ、末娘の卒業パーティを元夫と一緒に開いたばかりだと教えてくれた。素晴らしいことだけど、それは驚きだと言うと、彼女は少し笑って言った。

「真面目な話、私たちがいちばんびっくりしてるのよ」

いったいどうしてそうなったのかと聞くと、彼女は思いやりと関係があると答えた。彼の否定的な行動を前向きな行動を取るきっかけにしたことで、彼女は前より幸せになり、相手を思いやる心の余裕が生まれたのだ。

屈辱と落胆にまみれた世界から抜け出すと、物事を明晰に考えられるようになった。

そして、元夫が彼女とちがって人づきあいのスキルをあまり磨いてこなかったことに気づいた。結婚しているあいだは、彼が他人とうまくつき合えるように彼女があいだに立っていた。

ところが離婚後はすべて自分でどうにかするしかなかった。それが彼にとって難しいことだとわかったので、エイミーは彼を思いやるようになったのだ。

私たちは、相手がはっきり意思表示しなくても、自分がどう思われているのかわかるものだ。

エイミーは元夫が彼女の態度の変化と、その背後にある思いやりの気持ちを感じ取り、彼自身も変わり始めたのではないかと考えている。

また彼女によると、これはまったく予期せぬことだった。自分をいたわる習慣を身につけたときの彼女は、ただ自分自身を守り、ひどい状況を変えようとしていただけだったのだから。

(本原稿は『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』<BJ・フォッグ著、須川綾子訳>からの抜粋です)


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