ビジネス

2022.02.06

米億万長者投資家が買った、日本のリアリティ・ショー発「じゃがいもビジネス」の機知

ポテト・パーセル(Potato Parcel)のHPから

2001年10月から2004年3月まで日本テレビで放送されて人気を博したビジネスリアリティ番組に、「¥マネーの虎」があった。一般人起業家が事業計画をプレゼンテーションし、投資家である審査員が出資を決定するという企画だった。この番組フォーマットはのちに英米をはじめとする実に9カ国に輸出されてやはり人気番組になっている。

2016年、その「¥マネーの虎」の米国版、ABCの「シャーク・タンク」から飛び出して成功、話題になっている珍奇なビジネスがあることをご存じだろうか。

それは、米国の28歳の起業家リアド・ベヒートによってプレゼンされ、番組中に著名な億万長者ケビン・オレアリー氏が投資を決めたビジネス「ポテト・パーセル」だ。


億万長者ケビン・オレアリー氏。自分のイラストが印字された「ポテト・パーセル」のじゃがいもと。

そのビジネスモデルは、ちょっと聞くだけではそれほど魅力的とは思えないばかりか、むしろいささか「バカバカしい」。なにしろ、9.99ドルでじゃがいもに手書きのメッセージを書いて郵送するだけ、というサービスなのだ。

だが「シャーク・タンク」で紹介されるや、7万個のメッセージつきポテトを完売。今では年間6桁ドルの売上げを上げるまでとなった。

「シャーク・タンク」には前述のケビン・オライリーのほか、数人の億万長者投資家が審査員として参加しているが、その1人マーク・キューバンは番組中に「信じられないほどバカバカしい(It’s just stupid on a stick)」と発言、同じく億万長者審査員のロリ・グライナーも「真に受けるのは愚の骨頂だろう」とコメント。

だがケビン・オライリーの反応は違った。すでにこのビジネスが受注件数12000件、月に21万5000ドルの売上げがあることもヒントにし、契約後60日間は受注1件ごとにロイヤリティー1ドルを受け取ることを条件に、5万ドルで10%の株式を買うことを申し出たのだ。


起業家リアド・ベヒートと、出資者である億万長者ケビン・オレアリー

「ポテト・パーセル」のアイディアはそもそも2015年に、Redditの投稿でスタンプがベタベタ押されたじゃがいもを見たことから、テキサス在住のアレックス・クレイグが思いついたものだ。アレックスの発案を、当時のガールフレンドは「ばっかじゃないの。1個も売れるはずないよ」と一笑にふしたというが、「Redditで宣伝したら、始めた翌日にすでに2000ドル(20万円)分の注文が来た」という。

8月までには、クレイグは月1万ドル(100万円)の利益を出すようになった。クレイグがべヒートとオンラインチャットルームで出会ったのはその頃だ。




ポテト・パーセル(Potato Parcel)のHPから

2015年10月には、クレイグは4万2000ドルでメッセージつきポテトのビジネスをべヒートに売却することに同意した。その後今日まで3年間、べヒートはビジネスを継続することになる。

14.99ドル出せば、じゃがいもの上に誰かの写真を印刷できる「ポテトパル」という特別メニューを注文できる。たとえば記念日、誕生日などに「グリーティングカード感覚で使ってほしい」とべヒート。

翌年1月には、オライリーはニューヨークタイムズ紙に、「ポテト・パーセルは『シャーク・タンク』を通して投資を決めた銘柄のなかでもトップ5に入るビジネスだね」と答えている。

「ポテト・パーセル」には「International potato(国際的なじゃがいも)」のサービスもあり、米国国外への配送にも対応している。今年のバレンタイン、「じゃがいもで愛」を伝えるのが日本でも流行する?

文=石井節子

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