2016年、その「¥マネーの虎」の米国版、ABCの「シャーク・タンク」から飛び出して成功、話題になっている珍奇なビジネスがあることをご存じだろうか。
それは、米国の28歳の起業家リアド・ベヒートによってプレゼンされ、番組中に著名な億万長者ケビン・オレアリー氏が投資を決めたビジネス「ポテト・パーセル」だ。
億万長者ケビン・オレアリー氏。自分のイラストが印字された「ポテト・パーセル」のじゃがいもと。
そのビジネスモデルは、ちょっと聞くだけではそれほど魅力的とは思えないばかりか、むしろいささか「バカバカしい」。なにしろ、9.99ドルでじゃがいもに手書きのメッセージを書いて郵送するだけ、というサービスなのだ。
だが「シャーク・タンク」で紹介されるや、7万個のメッセージつきポテトを完売。今では年間6桁ドルの売上げを上げるまでとなった。
「シャーク・タンク」には前述のケビン・オライリーのほか、数人の億万長者投資家が審査員として参加しているが、その1人マーク・キューバンは番組中に「信じられないほどバカバカしい(It’s just stupid on a stick)」と発言、同じく億万長者審査員のロリ・グライナーも「真に受けるのは愚の骨頂だろう」とコメント。
だがケビン・オライリーの反応は違った。すでにこのビジネスが受注件数12000件、月に21万5000ドルの売上げがあることもヒントにし、契約後60日間は受注1件ごとにロイヤリティー1ドルを受け取ることを条件に、5万ドルで10%の株式を買うことを申し出たのだ。
起業家リアド・ベヒートと、出資者である億万長者ケビン・オレアリー
「ポテト・パーセル」のアイディアはそもそも2015年に、Redditの投稿でスタンプがベタベタ押されたじゃがいもを見たことから、テキサス在住のアレックス・クレイグが思いついたものだ。アレックスの発案を、当時のガールフレンドは「ばっかじゃないの。1個も売れるはずないよ」と一笑にふしたというが、「Redditで宣伝したら、始めた翌日にすでに2000ドル(20万円)分の注文が来た」という。
8月までには、クレイグは月1万ドル(100万円)の利益を出すようになった。クレイグがべヒートとオンラインチャットルームで出会ったのはその頃だ。
ポテト・パーセル(Potato Parcel)のHPから
2015年10月には、クレイグは4万2000ドルでメッセージつきポテトのビジネスをべヒートに売却することに同意した。その後今日まで3年間、べヒートはビジネスを継続することになる。
14.99ドル出せば、じゃがいもの上に誰かの写真を印刷できる「ポテトパル」という特別メニューを注文できる。たとえば記念日、誕生日などに「グリーティングカード感覚で使ってほしい」とべヒート。
翌年1月には、オライリーはニューヨークタイムズ紙に、「ポテト・パーセルは『シャーク・タンク』を通して投資を決めた銘柄のなかでもトップ5に入るビジネスだね」と答えている。
「ポテト・パーセル」には「International potato(国際的なじゃがいも)」のサービスもあり、米国国外への配送にも対応している。今年のバレンタイン、「じゃがいもで愛」を伝えるのが日本でも流行する?