「いつも嫌な気分にさせる人」から、むしろ幸福を得るシンプルな方法

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「嫌な気分」が尾を引いてしまう


私の例はあっと驚くようなものではないが、最近になって、友人のエイミーもこれを独創的な状況で利用し、同じような効果を得たことを知った。

エイミーが取り組んだ問題ははるかに難しいものだったが、彼女はその中で見事な真珠の習慣を身につけた。

エイミーは、夫と別れたあと、親権についてはようやく合意に至ったが、元夫は依然として彼女に腹を立てていて、顔を合わせるのが苦痛だった。それでも、まったく会わないわけにもいかない。

数カ月後、エイミーはあるパターンに気づいた。元夫と不快なやりとりをすると、そのあと彼女はそれを一日中頭の中で繰り返し、苛立ちや怒り、罪悪感に何度も苦しめられるのだ。

彼女はこの状況に手を打つことにした。

元夫が彼女に投げかける言葉や、会話の展開をコントロールすることはできない。彼の攻撃は悪天候と同じで、荒れ模様が予測できることもあるが、何の前触れもないこともある。だがその後、自分の気分が悪くなることは、はっきりしている。だから、それを変えることにした。

目標は「元夫について考えないようにすること」。

エイミーは夫の行動をきっかけとして利用し、こんな計画を立てた。元夫に言い負かされたり攻撃されたと感じたら、すぐに自分にとって心地よいことをする。

お気に入りのバンドのニューアルバムを聴く、時間がなくて聴けずにいたオーディオブックを聴くといったことだ。ときにはスターバックスまで車を飛ばし、大好きなコーヒーを飲むこともあった。

その日のうちに自分のために貴重な時間を少しだけ確保するようになって、エイミーはこの習慣が二重の恩恵をもたらすことに気づいた。

彼女は自制心を取り戻すと同時に、自分に心地よいこともできるようになったのだ。

「侮辱されたと感じたら、自分のために心地よいことをする」これが彼女にとって功を奏した習慣のレシピだ(下図参照)。


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『習慣超大全──スタンフォード行動科学研究所の自分を変える方法』より

相手ではなく「自分」をコントロールする


このレシピを実践するようになって、彼女は元夫に侮辱的な言葉を返すことも、攻撃されたと感じることもなくなった。代わりに心の中でこうつぶやくのだ。

「また侮辱だ。ずっと観たかったあの映画を観れるわ」

彼女は夫に反論せず、別れの言葉を告げたら自分のことに集中し、その夜の計画を立てた。

おかげで一日が台無しになることはなくなった。いつの間にか、元夫とのやりとりを頭の中で繰り返すことがなくなり、彼の侮辱が思いがけない贈り物のように思えてきた。何といっても、自分をいたわるきっかけを与えてくれるのが彼なのだから。

おかしな理屈だとわかっているが、厳しい状況をできるだけおおらかに考えるのは、困難を切り抜けるのに役立った。

できることなら、エイミーは自分にこんな思いをさせる相手とは関わりたくなかっただろう。しかし私たちは、ストレスをもたらす相手や状況のすべてを人生から排除できるわけではない。ときには不公平な扱いをする相手や神経を逆なでする相手、態度の悪い相手にも我慢しなくてはならない。

だが、私たちは自分自身についてはコントロールできる。エイミーはそれをうまく実現した。他者の行動が自分を傷つけるようなものでも、それをあえて健康的な反応を引き出すきっかけとして用いるのは素晴らしいアイデアだ。自分が無力だと感じる多くの状況で効果を期待できる。
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