現地で「日本海ブリッジ」という旅行会社を経営するウラジーミル・ルセンコさんは「ソ連時代、島には軍事施設も多く、訪ねるには許可が必要でした。そのおかげで住人も少なく、手つかずの自然が残された。いまでは夏の休日に、多くの市民がこれらの無人島で過ごすようになりました」と話す。
ルセンコさんは、コロナ禍以前の夏までは、日本人観光客を自分のクルーザーに乗せて、無人島を案内していた。そして、島遊びがすんだあとに決まって連れて行くのが、海の上のバーニャである。
バーニャというのはロシア式サウナのことで、市内にも施設はたくさんあるが、郊外には自然のなかで入浴できる木造コテージ風のバーニャも多い。ロシア人が夏の間を過ごす、「ダーチャ」と呼ばれる近郊の菜園付きセコンドハウスの中に自家製バーニャをつくる人もいる。
最近、日本でもサウナブームである。特に野外のサウナは人気で、ロシアのバーニャも注目を集めている。この夏、ルセンコさんは何度かロシアの国内客も海の上のバーニャに案内したという。
「お客さんは喜んでくれました。私の案内するバーニャは海の上に浮かんでいるので、サウナ室のなかで波の揺れを感じられるのが新鮮です。何よりバーニャを出たあと、海にすぐ飛び込めるのも楽しい。熱く火照った身体に海水が染みる、この感触がいいのです」(ルセンコさん)
無数に点在するサーフィンのスポット
ウラジオストクでは、サーフィンやSUP(Stand Up Paddleboard=スタンドアップパドルボード)のようなマリンスポーツも盛んだ。沿海地方サーフィン連盟会長のダニイル・フィリノブさんは次のように話す。
「ウラジオストクにはサーフスポットがたくさんあり、毎年新しい場所も開拓されています。私の知るかぎり、地元には100人くらいのサーファーがいますが、彼らはお互いにあまり干渉せず、自分たちが見つけたビーチで波に乗っています」
コロナ禍以来、ロシア国内のサーファーたちはバリ島やアメリカ西海岸などの海外に出かけることができず、沿海地方やカムチャツカの海に姿を現していたという。ロシアでは稀少な、波乗りのできるビーチがある極東まで、わざわざ飛行機で8時間かけてモスクワなどからも訪れているという。
無人島の多さもさることながら、サーファーにとって独り占めできるほど多くのビーチが点在しているという環境がウラジオストクにはある。もしそれを自分の目で確かめたければ、ヘリコプターに乗って上空からのパノラマビューで、この半島と島々を眺めるといいだろう。
ヘリコプターでウラジオストク市街地を上空から眺める
2019年から現地のヘリコプター会社が企画催行するフライトでは、市内から44キロメートル北にあるウラジオストク空港からヘリで飛び立ち、半島を囲むウスリー湾やアムール湾、金角湾の上空を飛び、港に架かる金角湾大橋を一望することができる。
ウラジオストク港に架かる金角湾大橋は斜張橋でシルエットが美しい