「ニューウェーブ中華」の店で、メニューのペーパーレス化が進む理由

「譚鴨血火鍋」の店内。このQRコードをスキャンしてメニューから注文する

「譚鴨血火鍋」の店内。このQRコードをスキャンしてメニューから注文する

都内に急増する新感覚の中華料理を「東京ディープチャイナ」と名づけ、そのユニークな実態や未知なる味覚を探し求めて1年。日々の観察や中国系オーナーたちとの交流を通じていくつかの発見があった。

そのひとつが、これらの中華料理店でメニューの「ペーパーレス化」が進んでいることだ。

筆者が「チャイニーズ中華」と呼ぶ、中国語圏の人たちが経営する料理店では、これまでテーブルの上に分厚いメニューが置かれるのが常だった。そのうえ、店内はもとより店外にまでたくさんの料理の写真が貼り出されていて、店ごとそのままメニューかと思えるほどの状態だった。

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西川口の中国東北料理店の外壁にはご当地料理の写真がメニューのように並ぶ

なぜ彼らがそこまでするのかといえば、自分たちの提供する料理が、道行く日本の人たちにほとんど知られていないということを自覚していたからだ。

ところが、最近オープンしている新しい店ほど、そういった傾向は影を潜め、紙のメニューすら置かない店も増えているのだ。

中国チェーン店の一気通貫サービス


では、それらの店ではどうやって注文を取っているのだろうか。

2015年9月、池袋にオープンした中国の人気火鍋チェーン「海底撈火鍋(かいていろうひなべ)」では、紙のメニューは用意されておらず、日本の回転寿司店などでよく見かけるタッチパネル式のメニューが採用されている。

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「スープ」「肉海鮮」「野菜」「主食類」「アルコール類」などわかりやすい分類

同店は、客が注文した火鍋の具材や食後のデザートを、配膳ロボットがトレイに載せてテーブルまで運ぶことで有名だ。

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配膳ロボットを導入したのは、火鍋の具材が料理より運びやすい点にもある

この店では、タッチパネル式メニューが複数の言語に対応しており、中国語、日本語、英語の3つから選べる。一般に火鍋の注文は、まずスープの種類を選び、さらに具材を選んでいくのだが、食べ方に慣れていない日本の人たちでも、写真付きの日本語で説明されているので、比較的わかりやすい。

メニューの中には、日本の人たちにはあまり知られていない肉の部位が記された具材や一品料理なども混じってはいるが、ていねいな接客で定評のあるこのチェーンでは、店員に声をかけると、すぐに対応してくれるので心配はない。

とはいえ、筆者が言う「ペーパーレス化」とは、このタッチパネル式メニューのことではない。その先の進化系ともいうべき、QRコードを利用したメニューのことだ。どういうものかというと、テーブルに置かれたQRコードを自分のスマホでスキャンしてメニューを読み込み、それを利用して料理を注文するというスタイルである。
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文=中村正人 写真=佐藤憲一、東京ディープチャイナ研究会

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