ミスコンへの軽蔑心と潜入任務。女性捜査官が相反するミッションを迫られたとき

ミスコンに潜入捜査員として送り込まれたグレイシー(c) 2000 Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

近年、広告表現における女性像の取り扱い方について、性的なアイキャッチをできるだけ避けるべきだという声が上がるようになった。広告の種類にもよるが、確かに内容と無関係なところで女性性を強調するものは、時折目につく。

では、女性は「セクシーだ」とか「美しい」と思われたくないのか?と言えば、多くの人は「そういうわけではない」と答えるだろう。外見を評価されることは素直に嬉しい。でも外見だけしか評価されないのは寂しい。もちろん、中身を評価されつつも外見に引かれたら、やはり傷つく。

男性にとっても外見の重要性が言われるようになったが、やはり女性は、自身の外見がさまざまな場面でどのようにモノを言うか、男性以上に体験的によく知っているのだ。

さて、『デンジャラス・ビューティー』(ドナルド・ペトリ監督、2001)は、女性の「美」をめぐる傑作コメディである。サンドラ・ブロック主演で人気を博し、2005年には2も製作されている。

冒頭は、FBI捜査官のグレイシー(サンドラ・ブロック)の少女時代の短いエピソード、次いで時間は現在に飛び、ロシアン・マフィアを捕らえるための大立ち回りの場面が続く。

2つの挿話からわかるのは、いわゆる「男勝り」で正義感に溢れ腕っ節も強いグレイシーという女性に、「勢い余ってしまう行動のせいで報われない」という弱点があることだ。

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この欠点とともに、ボサボサの髪にノーメイクでおしゃれとは一切無縁な風貌から、職場では「ブス」カテゴリに入れられているという設定、一生懸命だがいささか荒っぽい彼女の言動は、むしろ私たちに親しみを抱かせる。

笑う時にブヒブヒ鼻を鳴らしたり、シャツの胸にシミをつけたままアイスをほうばったりする姿に、「とことんモテそうにない女」を演じるサンドラ・ブロックの意気込みが伝わってきて、いっそ清々しい。

グレイシーを支える2人の男


ドラマは、「ミス・アメリカ・コンテスト」の会場に爆弾を仕掛けたテロリストは誰か、その犯行をFBIがいかに食い止めるかというサスペンスと、「ミス・ニュージャージー」になりすましミスコンに潜入捜査員として送り込まれることになるグレイシーの「変身」と活躍の2つを柱に進行していく。

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文=大野 左紀子

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