「ニューウェーブ中華」の店で、メニューのペーパーレス化が進む理由


2020年9月、池袋にオープンした四川料理店「蜀一蜀二(しょくいちしょくに)」では、当初からこのQRコード利用のメニューを採用している。麻辣料理の本場である四川省成都の旧市街「錦里古街」のシックな雰囲気を再現している同店では、タッチパネル式メニューはなく、客はテーブルに置かれたQRコードを自らスキャンして料理を注文する。

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内装にも力を入れた新規店が増えている(「蜀一蜀二」にて)

この方式の優れている点は、テーブルごとに違うQRコードが割り振られているため、隣のテーブルの注文が自分たちの注文に紛れ込むことはない。また同じテーブルであれば誰のスマホから注文しても、重複されることなく頼むことができることだ。

なぜ、新規オープンの中華料理店でこのようなメニューのペーパーレス化が進んでいるのか。それはすでに本コラムでも書いたように、いま中国の最前線の外食シーンがそのまま東京に持ち込まれているからだ。

筆者は3年前、「上海で『モバイル決済』ライフをしたら、日本の遅れを痛感した」という記事で、上海の飲食店で体験した次のようなエピソードを紹介した。まずはそのまま引用してみよう。

「上海の友人に連れられて行った広東料理店では、支払いだけでなく、料理の注文まで自分のスマホでできた。テーブルに貼られている店のQRコードをスキャンするとメニューが立ち上がり、そこから注文すると料理が出てくるのだ。

店員は料理を運び、片付けるだけ。支払いも席でモバイル決済し、レシートをもらったら、あとは店を出るだけだ。日本の飲食店によく見かけるタッチパネル式メニューがずいぶん時代遅れに感じたものだ」

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「蜀一蜀二」のQRコード利用のメニュー。3か国語対応

このように、中国の外食チェーンでは、数年前からスマホで店の予約から料理の注文、決済に至る一気通貫のサービスが日常となっていたのだ。それが日本に持ち込まれないはずはないのである。

日本の客にはハードルが高い?


メニューのペーパーレス化のメリットは、店にとっては、印刷コストの削減、また極端に言えばスタッフは配膳のみを行えばよくなるため、人件費の削減にも貢献する。

コロナ禍では、紙メニューの衛生面を気にする人もいるだろう。しかし食事が終わるごとにテーブルは拭いても、多くの人の手に触れた紙のメニューを毎回拭くことは、どこまで徹底されているだろうか。防疫の観点からみても、メニューのペーパーレス化は、先進的な取り組みと言えるだろう。
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文=中村正人 写真=佐藤憲一、東京ディープチャイナ研究会

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