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「特別買収目的会社(SPAC)」の上場スキームに再び注目が集まる一方で、従来の新規株式公開(IPO)でも記録的な上場劇が続いた。その一つが、データウェアハウス企業の「スノーフレーク」だ。同社が、“IPO請負人”に会社の命運を託した理由とは。


将来性は高いが、実績のないスタートアップにとってSPACは理想的な資金調達の方法かもしれない。だが、確実に業績を高めている企業にとっては従来のIPOも悪いことばかりではない。

ここでは市場と顧客、製品に将来性がある会社を「戦略」で方向づけし、「経営」で規律をもたらした、“IPO請負人”の哲学をご紹介しよう。

フランク・スルートマン(62)にとって3度目となるIPOは、以前の2つとは異なるものになった。コロナ禍の影響で、データウェアハウス企業「Snowflake(スノーフレーク)」の上場記念式典はオンラインで行われた。2020年9月に同社が、ニューヨーク証券取引所の上場までに調達した資金は、約34億ドル(当時)に及んだ。

スルートマンがCEOに就任した当時、評価額が40億ドルだったスノーフレークは、今では時価総額810億ドルの上場企業にまで成長した。これまで計3社のIPOを成功に導き、個人資産が22億ドルを超えるスルートマンは「成功するための方程式など知らない」と言うが、少し彼と話をすれば、それが本当ではないことがわかる。

趣味がヨットレースの彼は、甲板に並ぶ船乗りたちが少しでも命令に背くようなら、ただちに海に放り込む船長のようなタイプのリーダーだ。

「若い頃は、辛抱強く部下の成長を見守るタイプだった。でも100回のうち99回は誤りだったことに気づいた今は、ずっと早く見切りをつけるようになった」と、スルートマンは語る。

「周りを説得しようとは思いません。ただやるべきことをやるだけです。CEOは会社を勝たせるためだけに存在します。勝てば官軍なのです。でも失敗すれば、誰も助けてくれはしませんよ」

母国オランダで、元軍人の父と肖像画家の母との間に生まれたスルートマンは、幼少の頃から競技用ヨットに親しみ、厳格な教育を受けて育った。ロッテルダムのエラスムス大学で経済学を専攻し、IBMで働くことを夢見て米国に渡った。だがその夢は叶わず、1982年にインディアナ州の田舎町にある、落ち目の合成皮革業界の企業に就職した。

「当時の経験から、私は下りのエレベーターには二度と乗らないことに決めた」と話す彼はその後、ミシガン州のソフトウェア企業「コンピュウェア」で上りのエレベーターに乗り込んだ。同社の顧客を旧来の大型コンピュータから近代的なサーバー型のツールに移行させる役割を彼は担っていた。

文=アレックス・コンラッド 写真=クリスティー・ヘム・クロック 翻訳=左近充ひとみ / パラ・アルタ 編集=上田裕資

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