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2021.07.15

米シリコンバレー発、暗号資産の「今」を読み解く6つのトレンド

暗号資産業界で今、何が起こっている?(Andriy Onufriyenko/Getty Images)

2020年後半から21年前半にかけて、大手金融機関やテック企業が先を争うように暗号資産市場に参入した。暗号資産のメインストリーム化への期待感が高まる中、5月前半には、暗号資産市場の時価総額が一時2.5兆ドル(約270兆円)を記録した。

5月中頃から複数の要因が重なり、暗号資産市場は一時50%以上急落したものの、それでも現在の時価総額は1年前に比べると5倍以上となっている。また、DeFi(分散型金融)やNFT(ノンファンジブル・トークン)などの新たなユースケースが躍進し、その勢いは衰えていない。一方で、中国の暗号資産規制やエルサルバドルのビットコイン法定通貨化などの国家レベルのニュースがメディアを騒がせた。

混乱する暗号資産業界で今、何が起こっているのだろうか?

筆者は、米国の金融業界とテック業界での経験を経て、現在、その2つの業界が交わるブロックチェーン業界に身を置いている。ブロックチェーンとは分散型ネットワークで正しい取引情報を共有することができる仕組みで、金融をはじめさまざまな分野で応用されている。筆者がブロックチェーン開発会社「リップル」のサンフランシスコ本社で働くなかで、直に観察し、経験している次世代金融の世界について本コラムで紹介していきたい。

第1回目の今回は、暗号資産業界の「今」を読み解くための6つのトレンドを厳選してお話ししよう。

トレンド1:大手企業、金融機関が続々と暗号資産市場に参入


なぜ大手企業が先を争うように暗号資産業界に参入し始めたのだろうか? これらの動向はざっくりと分けて2つに大別できる。

1. 投資および財務目的での活用


暗号資産業界はこれまで個人投資家が中心だったが、ここ1年で機関投資家の暗号資産に対する関心が急激に高まってきている。例えば、世界最大の資産運用会社ブラックロックがビットコイン先物を複数のファンドに組み入れたり、モルガン・スタンレーが富裕客層にビットコインファンドの提供を始めたりするなどの報道があった。

新型コロナウイルスによって各国が景気刺激策として法定通貨を大量発行し、低金利を維持するなか、インフレ・リスクが高まり、伝統的な「60/40ポートフォリオ」(株式60%、債券40%)ではこれまでのような期待リターンを得られないという懸念が広がった。そこで、機関投資家の間でも、インフレに強く、伝統的資産との相関係数も低い暗号資産が新たなアセットクラス(投資対象資産の種類)として注目されはじめたのだ。

さらに、テスラやスクエアといった先駆的な大手米国企業が、財務戦略としてバランスシート上の現金の一部をビットコインに割り当て始める動きも出てきた。いち早くビットコイン投資に動いた米上場企業マイクロストラテジーは、企業向けにビットコインカンファレンスを開催し、ビットコインを企業財務の一部として考えていくのは株主への責任として当然といわんばかりの熱弁を振るった。

このように、マクロ経済の動向がビットコイン市場に大きな影響を与え始めるようになり、特に米国の金融政策の方針が示される米連邦公開市場委員会(FOMC)の会議は世界中の投資家が毎回注視している。
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文=吉川絵美

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