コロナ禍が世界の観光業に与える損失「2年間で4兆ドル」

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴い、海外旅行業界が崩壊したことによる世界経済への損害は、2020年と2021年を合わせると4兆ドルに上る可能性があることが、国連の新しい報告書で明らかになった。

これほどの損失額が推定されたのは、新型コロナウイルス感染症が観光業界に直接もたらした影響に加え、観光業界と密接なつながりを持つ他の分野への波及効果が存在するからだ。国をまたいだ観光客が急減したことで、2020年は2兆4000億ドルの損失が生じた。2021年も同規模の損失が出る可能性がある、と国連報告書は警告している。回復の度合いは、世界全体でワクチン接種がどのくらい進むかによって大きく左右されるという。

報告書の指摘によると、現在は先進国の大半で観光業界の損失が減少している一方で、多くの発展途上国で状況が悪化している。その原因はワクチン格差だ。フランスやドイツ、スイス、英国、米国など、ワクチン接種率が高い国々では、観光業界が比較的早く回復すると見込まれている。しかし、海外旅行がパンデミック前の水準に戻るのは、早くても2023年というのが専門家の見方だ。

報告書による2021年の推定損失額は、観光客のさまざまな減少パターンと、ワクチン接種率を念頭に置いた3つのシナリオをベースに弾き出された。2021年の観光客を75%減と想定した最も厳しいシナリオでは、世界の損失額は2兆4000億ドルになる。このシナリオが現実となった場合に壊滅的な打撃を受けかねないのが、観光業に依存する多数の国々だ。たとえばトルコは、観光業がGDP(国内総生産)の5%を占めている。

報告書の予測によれば、最悪のシナリオが現実となった場合、トルコの観光業は、需要が330億ドル落ち込む計算だ。飲食業、小売業、通信業、運輸業といった関連分野の損失が加われば、GDP減少額は930億ドルと、その3倍になる。観光客の減少で、実質GDPはおよそ9%減となるが、実際には経済刺激策によって、その一部は相殺されると報告書は述べている。

観光業に依存する他国に目を向けてみると、エクアドルも、最悪のシナリオが実現した場合に最も大きな打撃を受ける見込みで、GDPは9%減少する。また、南アフリカのGDPも約8%減になると見られている。

「パンデミックに関連した観光客減少」に起因する2021年の推定GDP減少率(国別)*



*世界の観光業売上が9340億ドル減少するシナリオを反映した数値。損失額の一部は、経済刺激策によって相殺される。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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