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2021.08.15 08:30

小さいからこそできる、発想法のヒント クリエイターと共創し、何が生まれたのか

スモール・ジャイアンツ集中連載「Creative Ideation for R&D」 左から順に由紀精密事業企画グループ原盛夫、代表取締役大坪正人、Whatever CCO川村真司、由紀精密社長永松純

規模は小さくても世界で大きく羽ばたく可能性を秘めた企業を発掘する「スモール・ジャイアンツ プロジェクト」。2019年にパイオニア賞を受賞した由紀精密(本社・神奈川県茅ヶ崎市)は、金属の精密な切削加工を得意とする研究開発型の町工場だ。製造業としてブランディングを進めてきたが、マーケティング面では課題を持っているという。

(前回の記事:ものづくり企業必見!自社の強みを引き出すWhatever流・アイデアの広げ方

クリエイティブスタジオ「Whatever」のCCO川村真司とともに、ものづくり企業が抱える課題を解決するクリエイティブ・アイデアを考える集中連載「Creative Ideation for R&D」の最終回。今回は、自社の課題や目的をまとめた「クリエイティブ・ブリーフ」をもとに、由紀精密とWhatever両社がアイデアを持ち寄った。

Whateverによる緻密なヒアリングと分析から、どんな企画が生まれたのか。クリエイティブな発想法のヒントを探りたい。


由紀精密を身近に 自社発アイデアは?


7月中旬、両社のメンバーが京橋にある由紀精密東京オフィスに集まった。両社からは30個以上の企画が持ち寄られ、企画書を広げながら発表し合うことに。これらをフラットに川村がレビューし、クリエイティブディレクションをしていく形で進行した。

まずは由紀精密からのアイデア・プレゼンテーションからスタート。社長の永松純を中心に、若手技術者である事業企画グループの原盛夫と広報を交えて議論し、代表取締役の大坪正人もアイデア出しに加わった。

最初に出てきたアイデアは、由紀精密が得意な精密加工技術を活かしたミニチュアや、自社で開発したアナログレコードプレイヤー「AP-0」のような高額商品をキット化し、手に取りやすい廉価版として雑誌の付録のようにして販売するというもの。

永松は「誰にでも手が届き、身近に由紀精密を感じてもらえたら。あるハイエンドオーディオメーカーでは通常10万円以上の音響機器を製造していますが、企画製品として数量限定で2万円ほどで発売され、一瞬で完売した例がありました。この製品、カスタマイズも気軽にできるので、そこからさらにコミュニティを広がっていた印象があります」と語った。

それに対して川村は「由紀精密が誇る精密加工技術を身近に感じられるようなプロダクトでデモをするのはとても良い着眼点だと思います。ただ、レコードプレイヤーのキットなどはすでに他社の販売事例があり、独自性を出すのがなかなか難しいかもしれませんね。日常的に使うものや、身近に感じられるもので、もう少し前例がないユニークなモノだったり、話題になるようなニッチさのあるものが見つかるとさらに良いと思います」


自社発アイデアを紹介する由紀精密の永松純と大坪正人(左から順)

特にコミュニケーションツールに関心を示していた永松は、機械設計や金属加工を学ぶ学生の質問に専門家が答えるSNSアプリなどを提案。工学系の学生と接点を持ち、採用活動にも繋げたい狙いがある。

川村は「『スモール・ジャイアンツ』である企業のアウェアネスを高めるためには、必ずしも新商品開発など大きな予算が必要となるマーケティング活動をする必要はなく、こうしたコミュニティ・ビルディングに寄与するような自社の知見を活かしたサービスを作ったりしてコミュニケーションをとっていくという手段も有効です。その際は、きちんとカルチャーを作っていけるような長期的サービスとしてオペレーションする覚悟や人材が存在するのか、などを考慮する必要があります」と語った。
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文=督あかり 写真=苅部太郎 イラスト=Whatever

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