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2021.08.15 08:30

小さいからこそできる、発想法のヒント クリエイターと共創し、何が生まれたのか

スモール・ジャイアンツ集中連載「Creative Ideation for R&D」 左から順に由紀精密事業企画グループ原盛夫、代表取締役大坪正人、Whatever CCO川村真司、由紀精密社長永松純



2つ目のアイデアの分類:精密=小さい
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次に出されたアイデアのカテゴリーは「精密=小さい」というもの。由紀精密の強みである「精密さ」が一番問われる「極小サイズ」を企画の中心に据えたアイデア群だ。

この分類でもっとも盛り上がったのが、世界最小のグラフィティ「Tiny Tag」という、ストリート・アートというあえてこれまでの由紀精密の活動と離れたジャンルにチャレンジするアイデア。精密加工技術を駆使し、目に見えない1mm以下のグラフィティを描ける装置を制作。これを日本各地に持っていき、実際に様々な場所に極小グラフィティを施し、それを顕微鏡を通して撮影した写真と装置を展示するエキシビションを開く。その写真は本にまとめたり、アート作品としてNFT化して販売するといった展開まで考えられた企画だった。

「アート」というジャンルと「精密加工技術」の掛け算で、これまでと違ったコミュニティに対して由紀精密の知名度を上げる狙いがある。川村は「精密技術のデモンストレーションとして成立させつつ、目に見えない落書きは果たして犯罪になるのか?といったアートとして社会的な問いかけを内包した面白いアイデアだと思っています。『世界最小のグラフィティ』というわかりやすいヘッドラインが想像できるのも、世界的に話題にできるポテンシャルを持っています」と見込む。
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大坪は即座に「五軸加工のカッターパスのプログラムは複雑で芸術的でもあるので、そのデータをNFT化するのは面白いですね」と答えた。またこの企画は「精密・極小に刻印・印刷できるプリンター」を開発することになり、その後もこの装置を活かして他のアイデアを実現するため横展開もしやすいという。ここから派生して、目には見えないほど小さなタトゥーが入れられる装置を開発する「Smallest Tatoo」も提案された。

世界ではファッションとして親しまれているタトゥーも、日本では反社会的なイメージや、公衆浴場に入れないなどの影響があるが、1mm程度のサイズであれば簡単に隠せるためもっとカジュアルに入れることができるようになるのではないか、という企画だった。盛り上がった2案だが、「落書き」や「タトゥー」という存在が持つ印象がどうしても由紀精密のブランドイメージにそぐわないという理由で、R&D候補からは外された。こうした判断もブランディング活動においては当然重要になる。


世界最小のグラフィティ「Tiny Tag」のイメージ図(c) Whatever

次に出されたのは、極小サイズのフィギュアを作り、それらを使って由紀精密の歴史を極小ストップモーションアニメで描いたブランドムービー「ネジからはじまるBrand Story」というアイデア。元々がネジの開発から始まったという由紀精密の成り立ちをヒントに、全てが実際のネジ頭の上で展開するという、極小サイズのアニメーションを作るという。ネジなど機械部品の製造に始まり、公衆電話部品開発から人工衛星のパーツ開発へ進出するまでを精密なアニメーションで描くといったものだ。

川村は「ウェブサイトに書かれていた社史が非常に面白かったので、精密加工技術をうまく活用しながらこの物語を映像化できたら新たなファンを生み出すことができるんじゃないかと考えました。普通にコーポレートヒストリーを映像化してもあまり多くの人は見てくれませんが、極小のアニメーションというフックがあることで急に見てみたい気持ちが高まります」と説明。ネジ頭を舞台にしたストーリーに、原は思わず「これはかわいいですね」と声をあげた。永松も「タイミングが合えばぜひやってみたいです」と語った。


極小サイズのストップモーションアニメを用いたブランドムービー「ネジからはじまるBrand Story」イメージ(c) Whatever
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文=督あかり 写真=苅部太郎 イラスト=Whatever

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