年初には接種開始に出遅れたと言われた日本も、5月からの3カ月で急激に接種率を伸ばし、8月17日の時点では、少なくとも1回接種した人(累計)の割合は「Our World in Data」によれば、5位となりました。
一方で、新型コロナウイルスの新規感染者数は、8月18日に過去最多となる2万3917人を記録し、予断を許さぬ状況といえるでしょう。
以前からあったワクチンパスポート
このコロナ禍で訪日外国人数が激減していることは周知の事実です。日本政府観光局(JNTO)のデータによれば、今年5月の訪日外国人数は約1万人、6月は約9300人となり、過去最多を記録した2019年と比較すると、各月とも約0.3%という状況が続いています。
日本からの海外への渡航者も含め、いったい観光客が当たり前に往き来できる日はいつになるのか。また、先日のフジロックのような大型のイベントに人々が気兼ねなく参加できるようになる日はいつなのか。その日を待ち遠しく思う人も少なくないのではないでしょうか。
そんななか、海外との人の往き来を改善するための施策として開始されたのが「ワクチンパスポート(海外渡航用の新型コロナワクチン接種証明書)」です。この7月26日から全国の各市町村(特別区を含む)で申請と交付がスタートしました。
ワクチンパスポートは特定疾患に対する予防接種証明のこと。コロナ禍以前から、特定疾患への予防接種歴を証明する関連書類を発行するという手法は用いられてきました。実際に、これまでもガーナやブラジルなどへの渡航時には、黄熱病の予防接種証明が必要とされてきました。
この発想を新型コロナウイルスへの対策として活用し、海外渡航時の負担軽減や要件緩和、出入国管理の効率化を図ろうという動きが、世界各国で活発化しています。
日本では、書面でワクチンパスポートが発行されますが、世界を見渡すと、DXの機運と連動し、個人の健康や医療情報のデジタル化と結び付けられて運営されるケースも多くなりそうです。
イメージとしては、スマホアプリにワクチンの接種記録やPCR検査記録を保存し、施設利用や公共交通機関の利用、渡航などの際にタッチ認証を行うような仕組みです。ワクチンの接種歴のみならず、本人の健康情報や身分証明情報を利用する場合には、「ヘルスパスポート」とも呼ばれています。(本記事ではこれら健康情報の管理・参照サービス全般を広義の「ワクチンパスポート」として記載しています)