(前回の記事:コロナ禍のセルフラブ、どうしてる? kemioと話す「メンタルヘルス」)
今回は東京を拠点に臨床心理士、インフルエンサーとして活躍するみたらし加奈(以下、みたらし)をゲストに迎え、日本社会やLGBTQ+コミュニティにおけるメンタルヘルスについて一緒に考えていく。臨床心理士として、そしてLGBTQ+当事者として発信を行うみたらしは、どんな言葉を私たちに投げかけるのか──。
同じ病気なのに、話しづらい背景に
愛: 加奈さんの最近のメンタルヘルスや体の調子はどうですか?
みたらし: いまは少しずつ落ち着いてきているけど、少し前までは心も体も忙しいこともあって、メンタルヘルスについて発信しながらも自愛が難しく、不安定だったところもありました。でも梅雨も明け、気候の変動が緩やかになると共に感情も落ち着いてきています。
愛: 私も加奈さんと同じように、メンタルヘルスについて発信しながらも自分のことを忘れてしまう時があるので、すごく共感できます。
みたらし:そうですよね。私の場合は2週間に一度「教育分析」といって、カウンセラーのためのカウンセリングを受けています。自分の話や悩み事を「師匠」と呼んでいる臨床心理士の先生に聞いてもらうのですが、それを5年間くらい続けていることによってだいぶメンタルヘルスのバランスが保たれています。
愛:加奈さんがメンタルヘルスに興味を持つようになったきっかけを教えてください。
みたらし:私がメンタルヘルスに興味を持ったのは、高校生の時、自傷行為を無意識的にしていた時期があったことがきっかけです。当時は自傷行為をしていること自体をあまり理解していなかったのですが、ある日自傷行為と境界性パーソナリティ障害について書いてある本を読んで、そこで急に当事者感が湧いたんです。そこから独学で心理学の本を読むようになりました。
でも大学では専門的に心理学を勉強しておらず、卒業後も全く別の道が決まっていました。しかし就活が終わったタイミングで知人が統合失調症になり、連絡をいただいた時に、自分の中途半端な知識が役に立たないことに無力さを感じ、専門家になれば適切なアクションが取れたのではと思うようになりました。そんな時にちょうど周りの勧めを受け、臨床心理士の勉強を始めるために大学院に進学しました。
愛:海外ではもっとフランクにメンタルヘルスについて話しますが、日本にはそういった文化がなく一人で抱え込んでしまう人も多いと思います。私自身15歳頃からパニック発作などの症状が出ていたけれど、メンタルヘルスの知識がなかったために17歳でうつ病と診断されるまでは、そうした症状は私の性格の一部だと思っていました。加奈さんは日本社会に存在する精神疾患への偏見をなくすには、どうしたらいいと思いますか?