臨床心理士のみたらし加奈と話す「LGBTQ+とメンタルヘルス」のこと

対談連載「Talk about Mental Health」。第2回ゲストは、みたらし加奈


みたらし:例えばEquality Act Japanが提言しているLGBT平等法もその一つだけど、差別を差別として国が認めることが何よりも大切だと思います。あとやはり、同性婚や選択的夫婦別姓なども可決されたらいいなと思います。同性婚がもし日本で可決されたら、LGBTQ+のことだけではなく、社会のさまざまなことが変わっていくと私は信じています。社会的マイノリティーといわれる人たちが法のもとの平等として認められることで、生きやすい社会になり、社会の基盤が変わるきっかけになるかもしれません。政府としてそうした変化を起こしてもらうのと同時に、私たちにできることもあります。そういった思いでメンタルヘルスやLGBTについてなども発信をしています。

愛:法律から変わっていくことは一人一人が社会のなかでどのように暮らしていくのかにも大きく関連していますよね。加奈さんはパートナーの美樹さんとの日々をYouTubeで発信していますが、どんな反響がありますか?

LGBTQ+

みたらし:「子どもと見てます」とか「いままでLGBTの人は遠い存在で偏見もあったけど、見てると“普通”じゃん」みたいなコメントが多くて。そのコメントを読んで、改めて発信することの意義を感じました。

でもいまでもまだ、日本で「同性カップル」として暮らしていることに何らかの意味が生じてしまうと思うんです。いつかはそれが「当たり前」のこととして受け入れられて、特別なことだと認識されなくなるような社会になればいいなと思っています。メンタルヘルスについてもみんな考えるのが当たり前で、取り上げられるまでもないようになっていけばいいですね。

愛:最後に、この記事を読んでくださっている方々にメッセージをお願いします。

みたらし:忙しい日々のなかで、自分の心を置いてきぼりにしてしまうことがよくあります。しかしどんなに忙しくても自分の「快と不快」を大事に、体と心の状態に時々目を向けることが大切です。もやっとしたことがあったら無視せずに、それを取り上げて絡まった線を解きほぐすよう解決していく。これは必ずしも一人でできることではないので、そんな時は周りの人や専門家の力を借りて、一緒にその絡まった線を解きほぐしてみてください。

よく「こんな小さな悩みでカウンセリングに行ってもいいの」と聞かれることが多いけど、本当に全然いいんです。気軽に来てもらえたら、一緒に考えることはできますよと伝えたいです。

個人的には、「生きていたらなんとでもなる」と思っています。たとえ元気がなかったとしても、実はものすごいパワーで私たちの体は動かされています。自死しようとしてできなかった人が「人間の体ってすごいね」と言うエピソードを耳にすることがあるのですが、確かに「死にたい」と思っても、すぐに死ぬことって難しいんです。それくらい体の装置を止めるのはすごく大変で、心臓が動いている限り、体は傷を治そうとするし、私たちの知らないところで体はすごく生きようとしているんです。

メンタルヘルス

幸福の度合いを下げることも大事だと思います。雨が降っていて最悪と思うか、綺麗だなと思うか、見えている世界はかけているサングラスを変えることで、違うように映るかもしれない。いつでも感覚を研ぎ澄ませて、痛みを自分から切り離さないで。痛みも含めてあなた自身は尊い存在で、それは誰にも否定することができないということを忘れないようにしてほしいです。

聞き手・文=中川ホフマン愛 写真= 柴崎まどか 編集=河村優

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