パンデミックは、プライマークやユニクロといった小回りが利く小売事業者が提供する、「お値打ち品」のファッションに対する消費者の需要を高めた。そしてそれにより、熾烈な競争環境が生まれた。
なかには、その流れについていけない企業もあった。かつての有力者といえども失墜しうることを示す一例が、英国における直営店舗の閉鎖を決めたギャップのケースだ。
H&Mは、これまでのところうまく適応している。5月末までの半年間の売上は、12%増の101億ドル(866億スウェーデン・クローナ)に達した。第2四半期に、現地通貨計算で75%と大幅増となり、それに助けられたかたちだ。
2020年末時点では、H&Mグループ店舗の3分の1あまり(およそ1800店舗)が一時的に閉鎖されていたが、感染拡大を防ぐための制限が緩和されたのに伴い、順次営業が再開されてきた。H&Mの第2会計四半期が始まった2021年3月の時点では、およそ1300店舗がまだ閉鎖されていたが、5月末には、閉鎖中の店舗は140店前後にまで減っていた。
けん引役は米国。中国では不振
第2四半期の75%という回復ぶりに目を向けると、H&Mが事業を展開する主要10市場のうち、いくつかの市場できわめて好調な業績をあげているいっぽうで、目立って不振な市場がひとつある。
強力なけん引力になったのは米国だ。コロナ後の活動再開が他国よりも速かったおかげで、現地通貨計算で269%という目覚ましい伸びを見せた。米国はドイツを抜き、いまやH&Mにとって最大の市場になっている。
一方、トップ10の市場のうち、唯一売上が縮小したのが中国で、23%減だった。2020年第2四半期の時点では、中国はH&Mにとって3番目に大きい市場だったが、現在では6位まで後退している。