ビジネス

2021.07.09 10:00

成果が出るのは私がいなくなってから。日立CHROの覚悟と実践


──ほかにもリーダー育成やダイバーシティ推進、ジョブ型導入など、さまざまな施策を進めている。手ごたえは?

21年、当社110年の歴史で初めて女性が執行役員に就任した。執行役には、その女性も含めて外国人が4人になったように、本社部門でもダイバーシティが進み、実績は出てきたと思う。

──今後の人材部門のあるべき姿は?

人財部門もグローバルトップクラスになる必要がある。では、世界のHRトレンドはどうなっているか。グローバル企業のCHROに何人も会ったが、彼らはとても事業に近い。マイクロソフトやアマゾンのCPO(チーフ・ピープル・オフィサー)・CHROはもともと事業部門のトップ。我々も、もっと事業に近づくべきだ。

人財部門の機能は事業に近いBP(ビジネスパートナー)、制度をつくるCoE(センター・オブ・エクセレンス)、オペレーションを担うHRSS(HRシェアードサービス)にわけられるが、従来は同じ人がすべての役割を担い、結果としてBPがおろそかになっていた。事業に近づくには、それぞれの機能を分けてBPを厚くする必要がある。その分業を、4月から始めた。

──今後、CHROに求められるものは?

CEOやCFO、CSOをはじめ、社内外の多くのステークホルダーと議論しながら、事業の方向性を考え、実行することだ。ただ、人事は相手が人であることが特徴である。自分が現役のうちに成果が出ることを中心に進めるのではなく、5年後10年後を見て取り組むべきだ。

いま進めているジョブ型も、花開くのは、おそらく私がいなくなってからだ。それでもやるという覚悟をもった人でないと、CHROになってはいけない。経営における人の重要性が高まり、CHROが事業を決めていく要因となるかもしれないのだから。


中畑英信◎日立製作所代表執行役 執行役専務CHRO兼人財統括本部長。1983年4月、日立製作所入社。2013年10月より人財統括本部担当本部長、2018年4月より現職。

日立製作所◎1910年創業。代表者は、東原敏昭代表執行役執行役社長兼CEO。2021年3月期の連結売上収益予想は前期比5%減の8兆3000億円。連結純利益予想同4.2倍の3700億円。時価総額5兆804億円(4月13日時点)

文=村上 敬 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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