私たちがいま対応を迫られているのは、中国・武漢から感染が拡大した新型コロナウイルスとは、もはや別のウイルスだ。引き起こされる感染症の名称も、「Covid-21」に変えるべきかもしれない。
約1年間、ほとんど感染者が出ていなかった中国でも複数の地域で、感染拡大を防ぐための都市封鎖(ロックダウン)が行われている。世界で最も長い期間、感染が確認されなかった台湾でも、陽性者が急増した。
この深刻な状況をもたらしているのは、インドで最初に確認され、感染力が非常に強いとみられる変異株の「デルタ株」だ。
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の州都シドニーでは、カフェとショッピングモールで感染した人の行動を捉えた監視カメラの映像から、物理的な接触を伴わない「瞬間的(すれ違うだけの)接触」で、複数の人が感染した。
シドニーではクラスター(感染者集団)が発生。ワクチン接種率が低く、感染の急拡大が懸念される中、陽性者が110人にのぼったことから、現在2週間のロックダウンが実施されている。また、地方部の金鉱でデルタ株への感染者が確認された準州ノーザンテリトリーの州都ダーウィンでも、2日間にわたり同様の措置が講じられた。
ニューサウスウェールズ州との州境の封鎖を発表したクイーンズランド州保健当局のトップは英紙ガーディアンに対し、「パンデミックが発生した当初は、約15分間の濃厚接触で感染する可能性が高いと考えていた。だが、今では5~10秒でも懸念がある。わずか1年前と比べて、リスクははるかに増大している」と述べている。
一方、ビクトリア州では5月、インドで確認されたもうひとつの変異株、「カッパ株」の感染者が確認された。帰国後の隔離期間中に滞在していたホテルの廊下で、エアロゾル感染したとみられている。このときには同州で、ロックダウンが行われた。