経済・社会

2021.06.18 07:30

欠ける難民保護の視点 日本で入管法改正が「私たちの問題」として共感された理由

6月20日は世界難民の日。日本でも難民政策への関心が高まっている(shutterstock)

6月20日は世界難民の日。日本でも難民政策への関心が高まっている(shutterstock)

国内外の批判を受け、難民申請者の送還を可能にする規定を含む入管法改正案の国会での成立の見送り、廃案が決まってから約1カ月。6月20日に、世界難民の日を迎える。

この国会審議を巡っては、ことし3月に入管施設で収容中に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんの事案で世論の注目が集まり、強行採決しようとした与党に批判が高まった。SNSでの発信をきっかけに4万筆超えのオンライン署名が集まるなど、一般の人たちがかつてないほど声を上げたことも、廃案への後押しとなった。

そんななか、ツイッター上で「#難民の送還ではなく保護を」というハッシュタグを目にした人もいるだろう。難民支援協会が初めて行ったキャンペーンで、3月から協会の公式アカウントで情報発信を始めると、国会の成立見送りが決まった翌日5月19日時点で延べ24510件のリツイートといいねが集まり、ハッシュタグ付きのツイートは8500以上に広がった。

今回なぜここまで関心が高まったのか。また、国際的に見て日本の入管法や難民申請の問題点は何なのか──。ツイッターアクションのきっかけをつくった難民支援協会の石川えり代表理事に聞いた。


「#難民の送還ではなく保護を」なぜ共感が広がった?


衆議院本会議で4月16日に入管法改正案の審議入りした1カ月前、なかなか審議の見通しが見えないなかで、難民支援協会は初めてツイッターを使ったアクションを起こすことにした。それが、広がりを見せたキャンペーン「#難民の送還ではなく保護を」だ。

最初は、3月15日から3月末にかけて、難民申請者を送還することの問題について63回のツイートを通じて発信した。石川さんは「最初はこの問題が注目されておらず、知る人もごく限られているなかで、難民支援の観点から懸念が多い法案として呼びかけ、課題を分かりやすく伝えるように意識しました」と振り返る。



ツイートが拡散されるひとつのきっかけとなったのは、英国発ナチュラルコスメブランドLUSHがこのキャンペーンに賛同したことから。ハッシュタグと画像を添えて難民保護を呼びかけた。2017年からLUSHの信念に、誰もが持つべき権利である「移動の自由の大切さ」を明文化して追加し、日本でも難民やLGBTQ+など社会的マイノリティの支援を積極的にしてきた。



ツイッターキャンペーンを通じて集まった声は、入管法改正案の審議入り前後の3~5月に法務委員である与野党議員に直接届け、国会で十分に審議されるようアクションした。キャンペーン期間後も、このハッシュタグは関心をもった人々に自主的に用いられ、廃案を求めるツイートも多く見られた。

石川さんは「そもそも難民の当事者にとって切実であっても、本人や故郷の家族が迫害される可能性があり、声が挙げられないという本質的な問題があります。今回は、当事者ではない多くの方々が『私たちの問題』として捉えるようになったのが印象的です。LGBTQ+の支援をするアライのような共感の広がりは、日本の難民問題において画期的な出来事でした」と指摘する。
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文=督あかり

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