日本で、0.5%と低い難民認定率だが、認定までにかかる期間の平均は約52カ月、つまり4年4カ月にも及ぶ。石川さんは「その間、収容しないのが原則として、さらに生活保障をどうすべきかという点にも目を向けていただきたい」と訴える。
コロナ禍で変化する、難民の生活と支援のあり方
私たちの日常生活において、なかなか難民の暮らしを知る機会はないが、どう生活をしているのだろうか。石川さんは「1回目の申請であれば、就労許可をもち、地域で暮らしながら審査の結果を待つ人が多くいます。来日直後は8カ月間ほど就労許可が出ない期間があり、特に支援が届かず困窮してしまう状況もありますが、在留資格がある方の場合にはコミュニティや団体の支援を受けながらそこを越えると、コロナ禍前であれば働きながら自立できる人も多くいました」と語る。
だが、コロナ禍には、難民支援のあり方も変化したという。最初の緊急事態宣言下では週2回に絞って事務所を開け、いまでは予約制で週4日開き、支援に当たっている。難民支援協会としても移動を促すこともできず、対面支援の回数は減ったという。そこで食料品や生活必需品を届けたり、電話カウンセリングなどを受け付けて支援のオンライン化も進んだ。
新規で入国する人は少ない一方で、モスクや教会などでの寝泊まりなど、これまでの支援を受けられなくなった人も多いという。
コロナ禍で対面支援の回数が減ったが、食料品などを届けるなどの対応をしてきた(難民支援協会提供)
また、在留資格がない人たちが置かれた状況は、コロナ以前から変らず過酷だ。在留資格がない場合には、難民申請中であっても収容の対象となるが、病気ややむを得ない事情などで一時的に身柄の拘束を解かれる「仮放免」中の人は、就労も許可されず、苦しい状況に置かれている。
石川さんは、今後について「難民認定や収容などの課題について、人権に配慮した施策へ変えていかなくてはなりません。また、難民申請中に最低限の生活を送ることができないことに対して、彼らの人権を保障する必要もあります。難民申請から認定、その後の受入れまで、包括的な難民保護の仕組みづくりについて議論し、改善につなげていきたい」と語る。
6月20日の世界難民の日には、難民支援協会の事務所から初めてライブ配信イベントを企画した。支援事業部のマネージャーが支援現場の活動や支援のエピソードについて話し、事務所を紹介するツアーを行う。参加は無料で、申し込み不要。協会のYouTubeとFacebookで配信する。
石川さんは「難民について『彼らの問題』ではなく『私たちの問題』としてこれからも一緒に考えて、関心を広げていきたい。SNSやイベント、報道などを通じて課題について知ることもできるし、難民の故郷のレシピや料理店などで食を通じて文化を知ることもできる。いろんなアクションがあるので、さまざまな形で支援の輪に加わってもらえたら」と呼びかける。