感染拡大収束後の観光需要を狙い、国内LCC初のアメリカ就航を今年の冬に見据える。機内ではセルフオーダーシステムやウォッシュレットトイレ設置など、既存LCCには無い取り組みを実現した。まさに航空業界の異端児だ。
「同業の人からは、頭のネジがぶっ飛んでると言われる」と笑顔で語る新進気鋭のトップ・西田真吾社長に、ZIPAIRが仕掛けるサービスや取り組みを聞いた。
搭乗客2人の、苦いデビュー戦
国際線専門のLCC、ZIPAIRは、2020年5月のデビューを目指し準備を重ねてきた。しかし、新型コロナで空港利用者は激減。同社の飛行機も発着する成田空港では、通常約300万人の国際線旅客がいるが、5月には5万3000人にまで落ち込んでいた。
旅客便の就航に漕ぎつけたのは、およそ5カ月後の10月。韓国への便だったが、搭乗客はわずか2人と、まさに逆風下の苦いスタートとなった。
その中で同社を救ったのは、JALからリースするボーイング社の787機だった。広い貨物スペースがあり、航空運賃上昇もあいまって、貨物輸送で儲けを生み出した。
「飛行機のリース代や社員の人件費を賄えと言われたら難しい。それでも飛ばないよりは赤字幅を縮小でき、食い繋ぐことができた」という。
バンコクや韓国、ホノルル(現在休止で7月再開)への路線で、6月は153便の運航予定(ソウル線26往復、バンコク線50.5往復)だが、今も搭乗客は多い便で50人、少なければひと桁と厳しい状況は依然として続いている。
しかし、これほどの窮地でも、西田社長は前のめりだ。「コロナでしんどい思いをしたのは、航空業界みんな同じ。ただ我々は、幸か不幸か、何も持ってないところからのスタートだったので、影響は他の航空会社と比べて軽微。せっかくゼロから作る機会をもらったんだから面白いことをやろう」との思いで、事業を進めてきた。
乗務から経理まで
ZIPAIRのユニークなポイントとしてまず注目したいのは、客室乗務員(CA)の働き方だ。乗務にだけ専念する他の航空会社と異なり、マーケティングや広報、経理などそれぞれが地上業務も兼任する。
これにはどのような狙いがあるのか。