同社は6月2日、シリーズDラウンドで10億ドルを調達し、評価額を110億ドル(約1.2兆円)に引き上げたと発表した。今回のラウンドは、Durable Capital PartnersとTロウ・プライスの主導によるもので、フランクリン・テンプルトンやSplunk Venturesなどが参加した。同社の既存出資元としてはAccelや83North、クアルトリクス創業者のライアン・スミスなどが挙げられる。
今回の資金調達は、ドイツとニューヨークに本社を置くセロニスが、IPOに向けて元グーグルのCarlos KirjnerをCFOに起用したことに伴うものという。
2011年設立のセロニスは、リンケともう一人の共同CEOのバスティアン・ノミナヘル、CTOのマーティン・クレンクの3人が立ち上げた企業だ。彼らは、ミュンヘン工科大学の博士課程に在学中に、ITログをスキャンして企業の業務プロセスをマッピングする「プロセスマイニング」を、コンサルティング業務に導入することを思い立った。
創業当初にドイツのメディア企業Bayerischer Rundfunkを顧客にした同社は、同じくドイツの大手企業シーメンスとの契約も獲得し、個々の業務プロセスが抱える課題を自動検出するシステムで高い評価を得た。
「これまでの大手企業は、コンサルタントを招いて、どこが非効率なのかを明らかにしようとしてきた。組織が大きくなると、企業は自分自身が最大の敵になってしまう」と、リンケは話す。
その後、欧州の複数の大手企業を顧客に持つようになったセロニスは、2016年のシリーズAで2750万ドルを調達し、ニューヨークに2番目のオフィスを設置して米国市場に進出した。そして2019年に売上1億ドルを達成し、評価額は25億ドルに到達していた。
セロニスの成長の秘訣は、企業が同社のソフトウェアを用いて生産性を向上させ、何百万ドルものコストを削減できる点にあるとされる。元セールスフォースの共同CEOで、現在はセロニスのアドバイザーを務めるKeith Blockは、「従来のアナリティクスやインテリジェンスツールは問題を報告するだけで、改善プランを提案できない」と話す。