デジタル技術やAI技術の加速的な進化や進歩によって、データを伴う論理的な作業はコンピュータのほうが人間による労働よりも遥かに早く、正確に実行できる分野を広げています。急速にデジタル労働力が実用化される現在の流れにおいては、人材の能力に対する評価軸が変化していくはずです。
機械のように正確さを必要とする仕事はコンピュータに任せて、企業戦略となる「ストーリー」を創造するなど、コンピュータには感知できない非言語情報的な問題に人材は特化していくことになります。
ですので、日本企業を経営する人たちには、日々の収益をもたらしてくれる社員のみならず、将来の収益の源泉を創出してくれる変な人も評価いただきたいと考えています。そして彼らが活躍できる環境を創って欲しいと思います。
企業で働く人たちには、信頼できる上司がいるなら、時には変な人になることをお勧めします。そうすることによって、日々の仕事を違う角度から見ることができ、社会的な活動としても深みが増していくと思います。また、成果主義が進めば進むほど、冷静な洞察力と新たな価値創造への情熱を持った変な人が重宝されることになると思います。そうでなければ企業の将来はありません。
転職によって多様な経験を積み上げる
日本の高度経済成長期には常識と思われていた、大企業を中心とした終身雇用の制度は事実上終焉を迎えていることには、皆さんも同意されると思います。価値観が多様化し、定年を過ぎても働こうという人たちが増えていくなかで、1社だけの職業経験よりも、複数社で多角的な経験を積んだ人材を評価する流れがでてきているようです。その証左として、転職者数は年率2〜3%で増加しているようです。
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一方、労働政策研究・研修機構の2018年の「データブック国際労働比較」によると、日本の平均勤続年数は11.9年となっています。これはフランスやドイツと同程度ですが、北欧諸国やイギリスでは8〜9年ほどであり、アメリカに至っては4.2年となっています。
日本の特徴は、男女雇用機会均等法が施行されてすでに四半世紀以上が経過したにもかかわらず、男女で勤続年数に大きなギャップがある点です。欧米では男女間でほぼ差はないのですが、日本では男性が13.9年、女性が9.3年となっています。これは女性活躍推進が進まない状況を反映して言えるのかもしれません。
しかしながら、スタートアップ企業のなかには、多様な人材の活躍の場を設けている企業も多くあり、結果として経営状況も良いように見受けます。
さて、昨今の企業の置かれた状況や、日本におけるギグワークやジョブ型などの拡大に伴い、人々はより多様で柔軟な働き方を手に入れることになります。そして、転職は今後ますます増えていくことになるはずです。