ソニーと村田は株式市場でいずれも「国際優良銘柄」と位置付けられる存在。日本にとどまらず世界で稼ぐ点が高く評価されている。株価もともに昨年3月から今年1月にかけて急騰。いずれも1万円を突破し、昨年3月の安値から倍以上の水準に跳ね上がった。
上昇の背景にあったのはコロナ禍での業績拡大だ。ソニーグループはゲームや音楽などエンタテインメント関連の事業が収益増を牽引。前21年3月期の純利益が初めて1兆円台に乗せた。ゲームは「プレイステーション5(PS5)」が大人気。音楽は世界的なストリーミング配信サービスの浸透が収益増を後押しした。「巣ごもり消費」拡大の追い風に乗った格好だ。
電子部品の「セラミックコンデンサー」では世界首位の村田製作所も、国内外での自動車生産の立ち直りに伴って車載用の需要が急回復。スマートフォン向けの引き合いも伸長した。前21年3月期純益は期初の減益の予想から一転して約30%の増益となり、過去最高を塗り替えた。
両株式の30日の値動きをめぐって、市場関係者からは「これまでの業績の伸びを織り込み、買われ過ぎていた」との声も聞かれた。確かにそうした面はあるが、それだけではなさそう。
相場全般の先高観に市場が覆われていると、業績見通しがコンセンサス予想を下回ったとしてもむしろ「会社計画は保守的」などと受け止められ、株価にほとんど悪影響を与えないケースも少なくない。
ところが、決算シーズン真っ只中の現在の市場では、電子部品大手の京セラや通信用計測器大手のアンリツなどにも、22年3月期の会社業績見通しがコンセンサス予想に届かなかったのを材料にした「失望売り」が先行した。市場参加者の悲観的な反応は、相場変調への警戒感がジワジワと強まっている証左と言えそうだ。
TOPIXの4月30日終値は1898.24ポイント。3月19日の高値からは約6%下落した。高値を付けた日は、首都圏の4都県で1月から発令中だった緊急事態宣言の解除に踏み切ることを決めた翌日である。実際に解除されたのは3月21日だったが、わずか1カ月で東京都に3度目の緊急事態宣言発令に至った。「3月の宣言解除は時期尚早」とのメッセージを株価が発していたとも読める。現政権はマーケットの警告に今後、どう応えるのだろうか。