米国株に比べて日本株の劣勢が目立つようになったのは3月後半からだ。両国株式の優劣を示す物差しに「ST倍率」と呼ばれる指標がある。同倍率は米S&P500を東証株価指数(TOPIX)で割ってはじき出す。日本でよく知られた日経平均株価でなくTOPIXを使うのはS&P500と同様に時価総額加重型の指数であり、多くの機関投資家のベンチマークとされているからだ。
昨年4月からの推移を見ると、同倍率の拡大が9月初頭まで続いた後、緩やかに低下。その後は、今年の3月19日を底に、倍率が急上昇している。4月21日には2.21倍と昨年4月以降では最も高い水準に到達した。つまり、米国株に対して出遅れていた日本株が昨年9月から巻き返していたが、今年3月19日を境に米国株優位の状況に変わったというわけだ。
日本の株式市場に停滞ムードが広がっているのは、新型コロナウイルス感染に終息の兆しが見えず、国内景気の下押しリスクが意識されているためだ。「第4波」の到来が投資家心理を揺さぶっている。
特に世界の株式市場で最近、材料視されているのが新型コロナウイルスのワクチン接種のスピードだ。日本のワクチン接種の遅れは2021年度の経済浮揚の重しになる可能性が高い。英オックスフォード大学の研究者グループが運営するデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」によると、100人当たりのワクチン接種回数は米国が70.97回。これに対して、日本は2.76回にすぎない(4月29日時点)。
両国間の株価格差もワクチン接種の進捗度合いなどに起因する景況感の違いを反映したものだろう。国際通貨基金(IMF)は21年の米国の実質国内総生産(GDP)について6.4%の伸びを見込むのに対し、日本は3.3%成長にとどまると見ている。
コロナ禍で好調だったソニーも株価下落
個別の銘柄にも投資家心理の変化を示唆するような動きが目に付く。具体例として挙げられるのが、4月30日の市場でのソニーグループと、電子部品メーカー大手の村田製作所両社の株価下落だ。
値下がりの理由は共通していた。両社が前営業日の28日の取引終了後に明らかにした2022年3月期の業績見通しが、アナリストのコンセンサス予想を下回ったためだ。ソニーグループの同3月期の純利益予想は6600億円。前21年3月期と会計基準が異なるため、単純比較はできないが、コンセンサス予想には未達の水準である。
村田製作所の22年3月期の純利益予想は2400億円。前期比約1%増と増益見通しを公表したが、こちらもコンセンサス予想には届かず、両社の株式に嫌気売りが膨らんだ。