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日本自動車殿堂「歴史遺産車」に選ばれた初代ジムニー(スズキ株式会社提供)

北米には、カルト的な人気を誇り、熱狂的な“信者”を抱える「カルトブランド」という概念が存在する。そして、カルトブランドを目指すブランディング手法を「カルトブランディング」と呼ぶ。

国内外を飛び回りカルトブランディングの研究を続ける、Forbes JAPANオフィシャルコラムニスト田中森士は、新著『カルトブランディング 顧客を熱狂させる技法』(祥伝社新書)の中で、パンデミックに伴う環境変化などを理由に、カルトブランディングの必要性が高まっていると指摘する。また、ひとたび信者となれば「非合理的な献身」を示すようになるという。

その秘密はどこにあるのか──。カルトブランドの事例からひも解きたい。(以下の原稿は、同書の一部を抜粋)


信者を抱えるジムニー50周年 199カ国で累計300万台


2020年に発売50周年を迎え、これまでに全世界199の国と地域で累計300万台を販売している車がある。スズキの本格的な軽四輪駆動車・ジムニーだ。

初代ジムニーは1970年4月に発売。当時の軽自動車としては唯一の四駆であり、山間部や積雪地における重要な交通手段などとして活躍してきた。2018年に4代目となる新型が発売されたが、その人気は衰えを知らない。

なお、初代ジムニーは、日本の自動車の歴史に優れた足跡を残した名車を選定する日本自動車殿堂「歴史遺産車」に選ばれている。

1981年5月にフルモデルチェンジした2代目ジムニーは、実用車のイメージであった初代から、スタイリッシュなイメージへとデザインを一新したことから、幅広い層に支持された。2代目、そして1998年10月に誕生した3代目ともに、今でも中古車市場に数多く出回っており、街乗り用途としても愛用されているのをよく見かける。

ジムニーは信者を抱えるブランドである。新型ジムニーが取材時点でも納期待ち1年という状態が続いていることからも、よく分かる。

「他の車は選択肢に入らなかった」


2代目についても、「これ以外乗らない」と口にするユーザーもいるほど、熱烈な支持を集めている。一体、なぜこれほど支持されているのか。そのヒントを探るべく、まずは現役のユーザーに話を聞いた。

今回インタビューに応じてくれたのは、福岡市在住の西山秀三さん(仮名) 38歳。西山さんとジムニーとの出会いは、大学時代にまでさかのぼる。当時、実家から大学までの通学のために車が必要だった西山さんは、アルバイト代を貯めて2代目のJA11のブラックカラーを中古で購入した。四角いフォルムと、軽自動車というサイズ感にほれ込んだといい、「他の車は選択肢に入らなかった」と振り返る。

スズキ・ジムニー
2代目ジムニー・JA11。現在もユーザーからの支持を集めている(スズキ株式会社提供)

西山さんは、趣味でバンド活動を行なっていた。担当はウッドベース。全長200センチ近くの大きな楽器だが、ジムニーの助手席を倒すことで、荷室から助手席にかけて積むことができた。西山さんは「軽自動車にもかかわらず荷室に十分なスペースがあり、極めて実用的」と評価する。

文=田中森士

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