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化石燃料に代わるエネルギー源として期待がかかる水素だが、その可能性をめぐっては、いまだに世論は二分されている。だが、その均等化原価(levelized cost)、すなわち、「製造プラントのライフサイクル全体で見た、燃料あるいは熱源としての水素の製造コストに基づく平均的なライフサイクルコスト」は、今後大きく下落する可能性が高いようだ。しかもこの傾向は、再生可能エネルギーを使い、電気分解を通じて製造される水素に関して特に顕著だという。

調査会社のブルームバーグNEF(BNEF)によると、再生可能エネルギーから製造する「グリーン」な水素の製造コストは、現時点から2050年までの間に、最大で85%下落すると考えられるという。これはつまり、大半のモデル分析を行った経済圏において、水素1kgあたりのコストは1ドル未満(1MMBTU=100万英熱量あたりでは7.4ドル)にまで下落するということだ。

この最新の試算結果を導き出すにあたり、BNEFでは、世界の国内総生産(GDP)の約3分の1を占める、28の主要経済圏について検証を行った。これらの経済圏における627のプロジェクトが、BNEFによるモデル分析の対象となった。その結果、全体的な傾向として均等化原価の下落が予想できるだけでなく、「グリーン」な水素の製造コストは、「ブルー」な水素(化石燃料を原料としているが、製造工程で二酸化炭素の回収・貯留が行われている水素)だけでなく、温暖化ガスを排出する「グレー」な水素(回収・貯留を行わない化石燃料由来の水素)のコストをも下回るはずだとの見解が、4月上旬に発表されたリポートで示されている。

今回予想されたコストは、BNEFが以前に行った2030年時点の予測を13%下回るものだ。以前行われた2050年時点での予測と比べても、17%マイナスとなっている。こうしたコスト減の主要な要因として、BNEFでは、水素の製造に用いられる、太陽光発電による電気のコストが下がっている点を挙げている。

この予想が的中した場合、「再生可能な水素の製造コスト低下は、エネルギー業界の様相を一変させる可能性がある」と、BNEFの主任水素アナリスト、マーティン・テングラー(Martin Tengler)は指摘する。「将来的に、少なくとも世界経済の3分の1を占める経済圏は、化石燃料に1セントも上乗せすることなく、クリーンなエネルギー源を使用できる可能性があるということだ」

言うまでもないが、現時点で高止まりしている水素製造のコストを引き下げるためには、政府や政策に支えられた投資が引き続き必要になる。それは、水素導入推進派も認めるところだ。

一方で、多くの地域の自動車メーカーや提携先の燃料元売り各社も、新たな燃料としての水素に大いに注目している。中でも積極的な動きが目立つのが、日本のトヨタ自動車だ。トヨタは、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」シリーズを通じて、水素エコノミーに注力する姿勢を鮮明にしている。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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