国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

トヨタ「アイゴXプロローグ」

トヨタは最近、デザインに力を入れている。豊田章男社長が「No more boring cars」(もうつまらないクルマは作らない)と謳ってから4年経つけど、その成果が徐々に出てきている。

2021年の欧州カー・オブ・ザ・イヤー賞を受賞したヤリス、スポーティなSUVのC-HR、迫力あるスープラ、そして水素を燃料として使用する燃料電池車「新型ミライ」はそれぞれ業界でとても高く評価されている。話によると、同社の開発部の中で、チーフ・デザイナーが、チーフ・エンジニアと同様の地位に上げられたおかげだそうだ。

しかし、今月の半ばに欧州で発表された「アイゴXプロローグ」(Aygo X Prologue)はそのデザイン重視のテーマをさらに加速させている。

僕はこの写真を初めて見た時、とても驚いた。なんて格好いいんだろうと思った。ヘッドライトとデイタイム・ランニング・ライトがシームレスに繋がっている顔の表情が美味しそうなカニみたいな印象を受ける。このクルマは日本の道路環境にぴったり合うと思われるのだが、残念ながら日本に上陸しない。

正面から見たアイゴ

日本にもこういうエッジが効いたウェッジ形をしたスタイリッシュな超小型車のニーズはあるはずなのに、なんでトヨタは最も美しいクルマを日本に入れないのか。まるで、日本から欧州に渡った一流シェフが、欧州の材料を使って、非常に高く評価される美味しい日本料理を作ったけど、日本にいる僕らが試食できないようだね。

トヨタはラインアップにスパイスを加えたくて、こんなにエッジィでデザイン重視なモデルが生まれたけど、色のネーミングまでスパイシー。なんとボディカラーは唐辛子をイメージした「スパークリングチリレッド」とブラックの2トーンに仕上がっている。

Aセグメントモデルのコンセプトカーとしてデビューした「アイゴX」は、アイゴの後継モデルとなるけど、このイケメンなルックスはヤリス・クロスの弟分と言ってもおかしくない。このアイゴXは、欧州でいう「シティカー」の新しい形のようだ。

日本ではパッソがトヨタのエントリー・モデルになるけど、欧州では現行アイゴがボトムレンジを支えている。欧州市場のシェア拡大を図りたいトヨタは、ダイハツから知恵を借りて、5年ほど前に同車でAセグメントに投入した。そこで、さらにシェアを伸ばしたいので、こんな驚きのコンセプトモデルを発表した。現行モデルは純粋なハッチバックだったけど、「アイゴXプロローグ」コンセプトはクロスオーバー寄りのハッチバックに格好良く大変身。

「Aセグメント(超小型車)のクルマを再定義したかったんです」とトヨタ欧州デザイン・スタジオのイーアン・カータビアノ社長が語る。「ライバルのメーカーたちは、このセグメントを無視するようになってきているけど、僕らがそのギャップを埋めようと考えました。でも、やはり、顧客の目を引く力がないといけないので、デザインにはとても力を入れたました。」

しかし、アイゴXは今現在、デザインのことしか明らかになっていない。ハイブリッドなのか、EVなのか、そしてインテリアはどうなっているのか、トヨタからは一切情報がない。言えることは、トヨタは同社初の電気自動車を出す予定なので、アイゴXが現実となったら、きっとEVになるに違いない。

後ろから見たアイゴX

やはり、欧州のユーザーは最近、クルマを買いに行く時に、3つのことをメインに考慮するらしい。クルマは格好いいかどうか、走りはCO2と燃費を含めた環境性能にどれだけ意識しているかどうか、そして値段だね。

アイゴXがEVとして登場すれば、その3つの項目を見事に満たせるね。トヨタさん、この車を日本にも入れてくださ~い。


連載「ライオンのひと吠え」
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文=ピーターライオン

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