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トヨタ自動車、北米本社

「トヨタの北米事業50年の中で最も大きな転機の一つ」

トヨタ・モーター・エンジニアリング・アンド・マニファクチャリング・ノース・アメリカのCEOジム・レンツは、2014年、カリフォルニア州からテキサス州ダラス北部プレイノへのトヨタ米国本社機能移転を発表した際、こう語った。

この発表が口火を切るように、16年には建機製造大手クボタが米販売子会社の本社を、同じくカリフォルニア州からダラス近郊に移転。同年、電機大手パナソニックも、デジタル関連の拠点をダラス市街に開設した。

なぜ、日本企業はダラスに進出するのか。

トヨタが米国本社移転の理由の一つとして挙げるのが、交通の便の良さだ。

「北米の生産事業体がアメリカの複数州とメキシコ、カナダにわたっている中で、最も各拠点との時差が少なく、すべての拠点に直行便のあるロケーションを選んだ」(トヨタ自動車広報部)

ジェトロ海外調査部米州課長の秋山士郎も、「地理的要因が最大のメリット」と話す。

ダラス・フォートワース空港は、アメリカ中部に位置し、アメリカン航空やサウスウエスト航空のハブ空港として知られる。発着回数ベースでは、ロサンゼルス、北京などを押さえ、年間68万回で世界第3位。広い米国はもとより、中南米へのアクセスも優れている。また、ダラス地域から陸路で48時間以内にアクセスできる都市の人口は全米の9割以上を占める。

秋山は地理的要因以外の理由として、「低い生活コスト」「労働の担い手かつ消費の担い手となる豊富な人口」「ビジネスフレンドリーな環境」「豊富な資源・エネルギーがあり、多様な産業が集積していること」の4つを挙げる。

特に、生活コストの安さはニューヨーク州やカリフォルニア州と比べて顕著である。テキサス州日本事務所によると、ダラス・フォートワース地域は全米で8番目の大都市圏でありながら、カリフォルニア州サンフランシスコと比較すると、生活費は約60%、住宅費は約30%という水準だ。

こうした背景から、全米から多くの優秀な若者が流入している。事実、全米の人口増加率の平均3.1%に対して、ダラスでは約3倍の8.2%を記録。さらに、ダラス・フォートワース都市圏の住民のうち、高卒以上の学歴を有する人口は81.4%と、米国内では高い教育水準を誇る。

労組加入が強制されない「Right to Work」州

企業側からの視点でみれば、生活費・住居費が安いために、カリフォルニア州などと比較して相対的に人件費水準を低く抑えられ、優秀な人材を雇うことができるわけだ。

低い税率(州の法人・個人所得税はゼロ)、最低賃金(時給7.25ドルは連邦準拠)、労働組合への加入が強制されない「Right to Work」州であることも、ビジネスを展開するのに好適な環境であるといえよう。

秋山がもう一つ、指摘するのが「テキサス州民の気質」だ。

「テキサス州は古き良き伝統や良いものを維持しながら、ハイテク技術やイノベーションなど新しいモノやサービスに関心を持ちやすい好奇心旺盛な土地柄だと言われています」

現在、今後の成長が見込める都市として米国、日本はもちろん、 世界中が注目している。


トヨタ自動車 北米本社◎北米事業はこれまで、各工場の拠点に加え、 カリフォルニア州(販売・金融系)、ミシガン州・ケンタッキー州(調達・製造・R&D等)、ニューヨーク州(調査・渉外広報等)に分散していた。これらの拠点をプレイノに集約。2017年7月に開設した。

文=小田駿一

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